天網恢々

紅之館 第六章
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応接室に重苦しい空気がのし掛かる。
皆が皆暗い表情をし、俯いて意気消沈としている。
緊迫した空気は好きだが暗く重い空気は好かんな。
改めてそう思っている自分がいた。

「私は朝食後、秋子が訪ねて来るまで操と暫し自室で仮眠を取っていた。秋子が訪ねて来たのは15時半頃だ。それからは、操と秋子と共に自室にいた。話の途中で秋子が春子の声がしたと部屋を飛び出し、それを追い掛けて倉庫の前で春子を、倉庫の中で夏帆を見つけた」

以前と同じように自らのアリバイを証す。
操と秋子が頷くと、他の者もポツリ、ポツリと話し出した。

「私は自室で誠二君、夏子君と一緒にこれからの事を話し合っていた。話が一段落した所で、秋子君が皐月さんと操さんの部屋に行くと席を外しました。皐月さんの言う通り15時半頃です。その後直ぐに春子君がワインセラーに行くと言い出し、席を外しました。それから30分経っても春子君が戻って来ない事を心配した私達は、様子を見に行く事にしたんです。そして部屋を出た時に春子君の叫び声が聞こえたので地下へ急いだんです」


成る程。
なるべく一人にはならないように言っておいたにも関わらず、その忠告を無視したという事だな。
夏子と秋子の方を見ると、二人共頷いた。
だが…。

「どうして…どうして春子を一人で行かせたのよ!」

「ヒッ…」

突然秋子が半狂乱で安藤に詰め寄った。
私は溜め息を一つ吐くと、安藤を背に秋子の前に立ちふさがる。
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