天網恢々
□紅之館 第二章
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「あら、どうかなさったんですか?」
応接室を出ると、春子が丁度通りかかり声をかけて来た。
「あ!えーと…」
「春子さんだ」
言い淀んだ操の言葉を引き継ぐ。
すると春子はかなりビックリした表情をした。
「私と秋子を見分けられるんですか!?」
「ああ」
「…凄いですね。私と秋子はお互い意外、母親しか見分ける事が出来ないんですよ?」
「そうなの?」
操が驚き聞くと、春子は深く頷いた。
そして操と二人で私を見る。
「…これから館内を回って取材しようと思うんだが、春子さんさえ良ければ案内を頼みたい」
「是非ご案内させて下さい。後私の事は春子と呼び捨てにして下さって結構です」
春子は快く案内を受けてくれた。
それに加え、呼び捨てでいいと言う。
年が近いせいか、あの子と似ているからかどこか親近感が沸く。
「ありがとう。春子」
「ワタシ達の事も呼び捨てにしてね」
「ではそうさせて頂きます。皐月さ…いえ皐月、操」
操と春子が嬉しそうに笑い合った。
「敬語も外してくれて構わないんだが」
「いえ、これはもう癖ですので。それでは食堂からご案内させて頂きますね」
春子の案内で、応接室の正面にある食堂へと向かう事になった。
その道中、浅野義晴からの招待状を見せて何か知らないか聞いてみたが春子は知らなかった。
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