天網恢々
□紅之館 第二章
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操と二人で話していると、春子が誠二を連れて厨房から戻って来た。
「こちらが岡誠二さんです。誠二さん、こちらはライターの賀川操さんと滝皐月さんです」
「宜しく」
「ライターの賀川操です。宜しくお願いします」
春子が紹介した岡誠二は白い薄汚れた服を着て、どこか寡黙な印象を受ける。
作業中だったのだろうか?
腰に巻いた黒いエプロンが濡れていた。
「早速ですが、10年前の惨殺事件について何かご存知有りませんか?」
操がインタビューを始めた。
私と春子はその様子を邪魔にならない様食堂の隅で見る事にする。
「知らない。その時俺は居なかった」
「それは失礼しました。では血染めのビーナス像と牙蛇湖については…?」
「それも知らない。俺は料理以外の事は興味ない」
誠二はどことなく人と関わるのが苦手そうで、本当に興味がなさそうだ。
その様子に操が僅かに落胆した表情を見せる。
「そうですか…。失礼ですがこちらでは何年勤めてらっしゃるのですか?」
「5年。38のとき、ここに雇われた」
「と、いう事は今は43歳ですか?」
「ああ。もう戻っていいか?」
「ああ、はい。お忙しい所ありがとうございました」
「いい。気にしてない」
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