天網恢々

紅之館 第二章
3ページ/27ページ

操と二人で話していると、春子が誠二を連れて厨房から戻って来た。

「こちらが岡誠二さんです。誠二さん、こちらはライターの賀川操さんと滝皐月さんです」

「宜しく」

「ライターの賀川操です。宜しくお願いします」

春子が紹介した岡誠二は白い薄汚れた服を着て、どこか寡黙な印象を受ける。
作業中だったのだろうか?
腰に巻いた黒いエプロンが濡れていた。

「早速ですが、10年前の惨殺事件について何かご存知有りませんか?」

操がインタビューを始めた。
私と春子はその様子を邪魔にならない様食堂の隅で見る事にする。

「知らない。その時俺は居なかった」

「それは失礼しました。では血染めのビーナス像と牙蛇湖については…?」

「それも知らない。俺は料理以外の事は興味ない」

誠二はどことなく人と関わるのが苦手そうで、本当に興味がなさそうだ。
その様子に操が僅かに落胆した表情を見せる。

「そうですか…。失礼ですがこちらでは何年勤めてらっしゃるのですか?」

「5年。38のとき、ここに雇われた」

「と、いう事は今は43歳ですか?」


「ああ。もう戻っていいか?」

「ああ、はい。お忙しい所ありがとうございました」

「いい。気にしてない」

.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ