Poem
□雛鳥
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目が覚めた筈なのに、そこは真っ暗闇だった。
明るい世界をずっと夢見ていたのに…。
やはり、それは夢でしか無かったのだろうか?
誰にとでもなく問い掛けて、僕はすぐ傍にあった硬い壁に手をやった。
この向こうには、一体何があるんだろう?
きっかけは、単なる好奇心だった。
この壁を壊してみようと思ったんだ。
誰に教わる訳でも無くて、自ら導きだした答えだった。
初めて、自分で出した答えだった。
始めこそ、ちっとも変化なんて無かったが、ガンガンやっているうちに、壁にひびか入って少しだけそこから光りがチラツキ出した。
それだけだったのに、とても嬉しくて、もう気力さえ底付いていた筈の僕の体が、ぐんと動いた。
壁の向こうの世界は、夢で見た光りの世界に違いない。
この時、僕は確信した。
何の根拠も無かったけど、ひび割れたそこから漏れる微かな光りがそうだと言っているようだった。
そして、僕が頑張れば頑張るほど、ひびは大きくなっていってくれた。
もう少し。
何の根拠も無いのに、僕の本能がこう叫んでいる。
始まりがささいな一瞬からだったせいで、終わりも呆気なかった。
あっという間も無く、僕の視界に満ち溢れんばかりの光達が入って来た。
これが外の世界。
眩しかった。
でも、僕は目を細めるどころか今まで無意識に閉じてしまっていたまぶたを開けた。
目の前に、大きな丸く黒いモノが見えた。
何かなんて解らなかったが、生きていることは理解できた。
と同時にこの者に従った方が良いという威圧感みたいなモノを感じた。
いや、もっと奥の方からの感情だった気もする。
初めてなのに懐かしいような、ちょっと恐いような、それでいて優しそうで、守ってくれそうで、なぜかこの者が好きだと思った。
『まぁ、かわいい坊や。初めまして。ママだよ。』
『ママ?』
僕が初めて見たモノは、光り輝く世界でも、暗闇の世界でも無かった。
『ママ…。』
『なぁに?』
『僕、ママ、大好き!!』
僕が初めて見たモノは、ママの目だった。
優しいママのツインの瞳だった。