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□粉、羽、生まれ
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「なぁ、メロ。好きって十回言ってみ。」
「何を?」
「は?」
「何を好きって言えって?」
そんな問を切り返すから、君は厳しいんだ。
【粉、羽、生まれ】
向かいのソファに座ったメロはいたって平常に見える。なのにこんなに恐いのはなんで?
「えーと。そーだな・・・・」
メロの真っ黒な瞳はさながら獲物を睨む鷹の目のようだ。常に相手を威圧するが、そのことに本人は気づいていない、っつーか無意識なんだろうな。
「・・・じゃあ、チョコで。」
「好き、好き、好」
「あ、ちょい待て。ストップ。」
メロは折りかけた指を止めた。
「何だよ。」
「今の無し。もっかいやり直そーぜ。」
「はぁ!?」
いや、ここはよく考えるべきなんだ。メロがチョコを好きって当たり前過ぎだしな。
どーせ言わせるなら"得な方"を選びたい。
「俺のこと、好きって十回言って。」
「なんでお前なんだよ。」
その発言に、メロの視線がどこへ向くのか気になった。
「普段全然言ってくれないから。」
視線が、気になった。
それでも俺はしらばっくれて、くわえていた煙草を灰皿へ押し潰しながら、嫌みに笑っていた。
「・・・なんで俺がお前のこと好きって言わなきゃならないんだ。」
"好きじゃないのに"
ため息のあとで、続くだろうと思われた言葉は無かった。けれど俺はじわりと溢れだした寂しさを、自覚せざるをえなかった。
「まぁ、メロがそう言うっていう予想はハナからついてた。」
メロはおもいっきり俺を睨んでいた。
「・・・いい加減にしろ。」
そう吐き捨てて、彼はさっさと部屋を出て行ってしまった。
ああ、もうマフィアに戻る時間か。
俺もいい加減にしないと、いつかキレられるな。
自分でもつまらないことをしたと思ってる。自分の欲求が、多分変な方向に向かってる。
ださいことしたよな。
好きって言ってもらいたいなんて。
メロの最後の言葉といい、目といい、明らかに何か考えていた。そうでなくても疑ってた。
いい加減にしないと、
俺はいつか捨てられる。
煙草に火を点ける指が止まった。
「・・・・それが一番嫌なんだけど。」
それでも
好きと聞かずにいられないのは、
なんでだ?
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