無題
□なつ
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なんとなく思う。
八月初めの街は、すこし黄色くて揺らいでいる。
陽炎のぼるコンクリート道を通ってお気に入りの場所へ向かう。
細い道。
突き当たりを右に曲がると古びた椅子がある。
狭い道に人ひとり通れるくらいのスペースを残して。
座るとギシギシ音を立てる。
ぼくは毎日ここで本を読む。
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『昼流星を希う』
『なあに?それ』
目を細めて空を見る人に訊いた。
その人はふわりと笑う。
『会いたいひとがいるんだよ』
そう言って手をつないだ。安心感のある大きな手。
つないだ手はすこし熱かった。
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