連載


□アオイハル〈1〉
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「あ、籐内!三之助見なかったか!?」

昼休み。
トイレから教室に戻ろうと歩いていると、廊下の向こうから声をかけられた。
何事かと振り返ると、そこには去年同じクラスだった富松作兵衛の姿が。

「三之助?」

作兵衛は相当急いでいるようだが、件の探し人が誰だかわからない。

「そう、三之助!次屋三之助だよ!ほら、よく俺と一緒にいる背が高くて前髪だけ色が違うやついるだろ?アレだよアレ!」

作兵衛と一緒にいる奴。そう聞いてまず浮かんだのは左門だったが、そういえばもう一人いたような気もする。

「…あぁ、あいつか。見かけてないけど」
「そっかぁ…。ったく!一体どこ行きやがったんだアイツは!」

作兵衛の話によると、弁当を食べ終えた後、左門がトイレに行くというので作兵衛が付き添ったらしい。
教室で大人しく待ってるように次屋に言ってから行ったが、戻ってきてみればそこに次屋の姿は無かったという。

「別に平気だろ。ただ単にサボりかもしれないし。左門じゃないんだから」

去年は左門とも同じクラスだったのだが、アイツの方向音痴には随分と手をやいた。
それでも作兵衛と2人がかりで世話をやいていたからまだ楽な方だったのかもしれない。
今年は1人で左門の世話だ。
作兵衛には同情する。
憐れみの眼差しを作兵衛に向けていると、作兵衛が声を張り上げた。

「籐内は何も分かってない!三之助は左門に負けない方向音痴なんだ!…どうしよう、もしかしたら学校の敷地から出てるかもしれない…。」

本当に、作兵衛には同情するよ。
しかし、いくら方向音痴とはいえ学校の敷地から出てしまうなんて有り得ないだろう。
作兵衛は少しおおげさだ。

「もう、心配しすぎだって。しょうがないから僕も探すの手伝ってやるよ」

あまりにも作兵衛が哀れに思えて、思わず手助けを申し出てしまった。

「本当か!? 悪いな籐内、クラスも違うっていうのに…。あ、昼休み中に見つからなかったら授業に行ってくれて大丈夫だからな!じゃ、頼んだ!」

そういうやいなや、作兵衛は駆け出して行った。
はぁ、仕方ない。乗りかかった船だ。昼休みももうすぐ終わるし、さっと探して見つからなかったら教室に戻ろう。

そう自分に言い聞かせて、件の『次屋三之助』とやらを探しに向かった。
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