短編

□ごめんと言わせて
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「ごめんな滝夜叉丸。そういうつもりはなかったんだ。いつもありがとう、気づいてやれなくてごめん。」

反省の意を込めて、震える背中をぽんぽんと叩けば、滝が私の首にすり寄るのが分かった。
今回の騒動は、今までに積もり積もった不満がとうとう溢れて、こぼれ落ちてしまった結果だろう。
日頃の私の振る舞いが災いしたのだなと苦笑して、滝の為にも考えるよりもまず行動という性分を改めねばなと反省した。

「それから滝」
「…」
「私、滝の事を小間使いだなんて思った事、一度もないからな。……いつも可愛い恋人だと思ってるよ」

あまり照れというものを感じない私だが、こういう事を改まって口にするのは少し恥ずかしい。
それを誤魔化すようにきつく滝夜叉丸を抱きしめれば、痛いです…とくぐもった声。
それでも抵抗しようとしない様子から、多分滝夜叉丸も照れているのだろうと口角が上がる。
きっと耳も顔も真っ赤に染めている可愛い恋人を、漸くこの腕に捕らえることが出来た幸せを噛み締めながら、事をややこしくしてくれた級友に向かって、覚悟しておけよと心の中で呟いた。











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