Vocaloid-Text

□そう、思っただけ
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「俺…」
ぶつぶつと呟くレン。
それをたまたま見かけた俺は率直に話しをかける。

「どうしたの?レン」
「練習」
そう返したレンの顔は真剣そのもので。
一体何の練習なのかと俺には理解ができなかった。

「僕も…俺って言った方がいいのかなって思って…」

そっか!と手を打つ。
いつもならレンは「俺」ではなくて「僕」だったから…。

「でもなんで?」
俺はそのままでも可愛いと思うのに。
「なんか…カイ兄が俺って言ってて僕だけが違うなんて何か嫌だ」
「レン君…」


俺は反射的にレンに抱きついてしまった。

「わっ?!ちょっ、くっつかないでよ!」
邪魔そうにもがくけれど、

とにかくレンが可愛くて
何より愛しくて…。


だって、俺に合わせようとしてくれているんだよ!?

可愛くないとか思えないでしょ、普通! 


「じゃあさ、俺もその練習に協力するよ」
「いいって、別に…」
「ほらほら言って言って」
抱きしめていた体勢で、レンを腕の中に入れたままその場に座ると彼も観念したのかぼそりと言い始める。
「…、っ」
「頑張れ!」
ドスッ。
「ぐふっっ」
いきなり肘鉄をくらった。

「…やっぱひとりで練習するよ」
「ええぇえっ」
まだ一分も経っていないのにっ。
「うざいもん」
「がーん」


そう、そっけなく彼はこの場を離れていった。



「ふっ…ふふ。そんなツンな所も可愛いんだけどねっ…!」


殴られた腹部を押さえながらひとり。


「アンタ、頭大丈夫?」


通りすがりのメイコさんに遠い目差しで言われた。















「レン?どうしてそんなに顔が赤いの〜?」

「え…あ。べ、別にっ…」










正直どちらでも良いと思う。

ただ

…ただ、ほんの少しだけ









―アナタの歩幅に合わせられたらと…










そう、思っただけ。









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