TOA
□声
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旅の途中ある朝の事だった。小鳥達の囀りにルークは目を覚ました。いつも通りにけのびをし、欠伸をする。その時彼は彼自身の異変に気づいた。
(声がでない)
焦りや不安が彼を襲った。自分がレプリカだと告げられてから心の奥に埋まっていたアッシュに対しての劣等感が募るばかりだった。そんな思いが自分の声を消したのかとルークは小さく縮こまった。その背中は泣いてるようにも見えた。
(なんで‥‥)
「御主人様朝ですの」
(今行く)
ミュウの声に答えようとしたが、やはり音として発する事は出来なかった。
「御主人様?」
不思議に思ったミュウが首を傾げてるのに対してルークは微笑みで返した。
「?」
ピオニー公爵の城に向かい歩いている中でいつもとの違いにジェイドは気づいていた。
「今日は静かですね」
嫌みのような独り言にルークは体を強ばらせる。
「御主人様朝から元気ないですの」
ミュウの言葉に全員がルークを見やるが何でもない素振りをし先を歩いた。
(みんなには言いたくない)
理由は一つだった。自分がレプリカだと知っている仲間が今どこかが欠陥していると知ったら、自分は要らないものだと言われる気がしたのだろう。
ルーク本人も裏切られるとは本当には思っていなかった。だが、自分の中で何かが欠けると言い表す事の出来ない不安に教われてしまう。
その夜、宿屋に泊まる事になった。一人一部屋づつ。ルークにとって今はそれが有り難かった。
(気付かれずにすむ)
そう思った矢先、ドアがノックされた。
「ルークいますか?」
ジェイドだった。本当に気付かれてしまったのかと焦っていると先にドアが開かれた。
「いるなら返事ぐらい‥‥」
平然を装ったつもりだったが、ジェイドには適わなかった。
「全く今日はどうしたんですか。普段のあなたらしくもない」
(声がでない)
深い溜め息をつく彼に話そうと口を開くが音にはなってくれなかった。
「声が、でないんですか?」
(えっ!?)
「なんでって顔をしていますね。分かりますよ。あなたの事だったら」
ジェイドの言葉にほっとした反面恐怖がこみ上げてきた。
(要らないって言われる!!)
そっと抱き締められた感覚にルークは顔を上げた。そこには深く考え込んだジェイドがいた。
「レプリカは劣化していると言ってもそれは特殊能力や記憶であって身体能力ではない筈なんですけどね」
(?)
「大丈夫ですよ。あなたを不要なものとは言いませんよ」
ルークの不安を悟ったのか頭を撫でながら言う。
ふとルークの瞳からは涙が伝った。
(‥‥ありがとう)
嬉しくてコツンとジェイドの胸板に頭を預けると優しく微笑むジェイドだったが、その表情はすぐにニヤリと変わった。
「劣化している所は喉だけですか?」
(?)
ジェイドの表情にルークは離れようとするがそれを許してはくれない。
「脱いで下さい」
にこやかに平然と言うジェイドに対して先程まで抱えていた恐怖とは別の恐怖に陥る。
「全く手がかかりますね」
言葉を発するのとほぼ同時にルークの服を剥いでいく。
(ギャー)
慣れているとまではないが、こういう関係ではある。しかし羞恥心は拭えない。
(やめろー)
じたばたと暴れてはみるが、ジェイドにとっては子猫を操るのと同様に容易い事だ。
「外見は特に変わりありませんね。」
(‥‥//)
真っ赤になるルークにジェイドは唇、首筋、胸と身体中にキスを落としていく。
「すみません」
(え?)
ふいに言われた謝罪の言葉。ルークにはその意図がわからなかった。
ただ真剣なジェイドの顔を見るとしっかりと目を合わせて話を聞かなければならないと思わせた。少しの間が開いてジェイドは口を開いた。
「私のせいですからね」
(?)
「私がレプリカを生んでしまいましたから」
(ジェイド‥‥)
急に深刻な表情で言うジェイドにルークは大きく首を振った。
(ジェイドのせいじゃない)
それが伝わったのかは優しく微笑んだ。
「ルーク、あなたは本当に変わりましたね」
はにかむルークにキスをする。
「続けても大丈夫ですか?」
(‥‥うん//)
小さく頷いた。
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