銀魂

□線香花火
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「銀さん花火やりましょうよ」
新八は大きな花火セットを手にしていた。そんないい加減な提案に神楽は大喜びで賛成をし、三人は夜河川敷に行く事になった。



夜の河川敷は思っていた以上に静かだった。

「おっきいの打ち上げるのヨロシ?」

「お前達だけでやれ。俺ぁこっちの方がいいからな」

手の甲で降り、反対の手には紙の紙縒のような線香花火が持たれていた。

「じじいアル」

「じじいでもいいんだよ」

ドーン!!

「わぁ!!新八あたしも上げるアル!!」

威勢のいい音を立てながら、新八の上げたロケット花火は夜空に大きな花を咲かせた。一方、少し離れた所で小さな金魚花火に火をつけ、手に収まる位の花を咲かせていた。その光に銀時は昔の自分を重ねていた。

攘夷時代。天人を斬っていた日々。いつからだっだのだろう。殺すという事に抵抗を覚えたのは‥‥。
斬るのは天人にこの江戸を占領されたくなかったからなのか。それとも自分の命を守る為だけだったのか。
攘夷派の人間は沢山いた。だが皆心のどこかで恐れていた。『白夜叉』という存在に。戦場を駆け荒らす銀色の髪に。
そんな仲間達も戦争や時代の移り変わりに散っていった。この線香花火の光のように。

「ん?あれ万事屋の旦那でないですかい?」

パトカーの中でふいに言った沖田の言葉に視線を移した。河川敷でははしゃいでいる新八や神楽に対して、何かに思い耽っている銀時の姿があった。

「おい、こんなとこて何してんだ?」

「ここ一応花火禁止区域なんですぜぃ」

二人の呼びかけにはしゃいでいる二人は聞こえなくても仕方ないとしても、一人でいる銀時には聞こえても良さそうなものだ。
パトカーから降りた土方は銀魂に歩み寄り問うが反応がない。
「銀時?」


線香花火の火が落ちた。その火のように仲間達は俺一人を残して死んでいった。沢山の死体。自分の手に流れる血。

一人息が残っている奴がいた。

『頑張れよ。俺が助けてやるから』

『助ける?馬鹿にしてんのか』

男は息も絶え絶えに嘲笑った。

『助けられねぇよお前には。何百人も数えきれねぇぐらい斬り殺してきたお前には誰も救えねぇ』

『‥‥‥』

(そうだ。俺には誰も救えない。だから一人になったんだ)

『うわあああぁぁ!!』
手に流れる大量の血を見て思う。

(助ける事も守る事も叶わない。だから松陰先生も俺の前から消えた?死と言うなの消え方で‥‥)

この時だっだのだろうか。殺す事が怖くなったのは‥‥。
ふいに銀時の瞳からは涙が零れた。あの日泣き叫んだ日と同じ涙だった。

(俺はどこかで一人になりたかったのか)

「おい銀時!!」

「‥‥‥」

「銀時!!」

「‥‥え?」

「大丈夫か」

意識がまるで別の所にあるような銀時の肩を掴み揺らす。

「‥‥ああ」

「たまやー」

「古いアル」

聞き慣れた笑い声が耳に入る。
(一人になりたかった訳じゃない。)

線香花火の光が散るように四人は自分の思想を魂を守る為に別々に散った。そう実感するとふいに笑みが零れた。その様子を見て土方は安堵し、そっと背中をおした。

「打ち上げ花火もっとやるぞー!!」

子供のようにはしゃぐ銀時を見て土方の口元が緩む。

「銀時可愛いぜ」

「勝手にアフレコすんなよ」

隣に立つ沖田はニヤニヤしながら言う。

「土方さんの心の中をさらけ出してやっただけですぜぃ」

「それをするな!!」

「ムッツリはモテませんぜ」

二人の言い合いは終わる事なく続いた。そんな二人を遠めに見ながら銀時は心の中で土方に礼を言った。あの時土方に呼び戻されなければ、自分は過去に飲み込まれていたに違いないと。





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