銀魂

□記憶喪失
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万事屋で子供を預かって欲しいという依頼。報酬額がそれなりに良かったので渋々仕事を引き受けた。

例の如くジャンケンで負けた銀時は子供を連れて歩いていると、何かあるのか子供は急に走り出した。通りの先には車が走っていてそこに飛び出したのだ。それに気づいた銀時は車の前に出て子供を救出するが、自らは避けきれなかった。鈍い音がした。
その車は真選組のものだった。
「銀時ー!!」

土方の叫び声は木霊した。
至急病院に運ばれた。出血は少なかったが、意識がなかったのだ。運悪く頭を打ってしまったようだ。

「……ん……」



目が覚めた時、そこには万事屋坂田銀時はいなかった。


「銀時?」

「あんた誰?」

「は?何冗談言ってんだよ」

違和感を感じた。感じない訳がないのだ。いつもの銀時とは程遠かったのだから。

「俺とお前付き合ってんだぜ」

「てめぇと付き合った覚えはねぇ」

「何言ってやがんだ。キスだって、身体を重ねたりも‥‥」

「ヅラと高杉はどこだ?」

まるで会話になっていなかった。

「桂と高杉?」

土方は表情を変えた。真選組が捉えようとしている攘夷派の人間の名前が二人も上がったのだから仕方あるまい。

「銀ちゃん頭大丈夫アルか?」

一瞬の事だった。銀時はベッド横の壁に立てかけてあった僕等を握り締めた。刃は神楽に向けられた。

「‥‥銀ちゃん?」

「おい、何してんだ!!」

「天人が何故ここにいる」

その一言で空気が凍りついた。銀時の口から放たれた冷たい言葉。


いたのは十年前の銀時だった。天人を斬り続けていた十七歳の銀時だったのだ。


「何言ってるアルか」

「天人は殺す」

まるで全てが自分の敵だと自らに言い聞かせるような瞳。

「お前何言ってんだ」

「天人の味方するのか。真選組が聞いて笑えるな」

鼻で笑った。土方が自分に意識をした一瞬だった。銀時の手は神楽の腕を掴み高く上げていた。

「痛」

斬りかかろう振り被った腕を後ろから土方が抑えた。

「止めろ銀時!!」

「放せ。邪魔するな」

言葉を発するのとほぼ同時に土方の鳩尾に肘を入れ、木刀を投げる。軽い呻き声と共に退いた土方の腰から真剣を引き抜いた。先程同様に神楽に刃を向ける。

「‥‥‥!?」

木刀とは全く違った威圧感。冷たく尖った刃は今の銀時のようでもあった。銀時は少しの躊躇いも無く刀を振り落とした。

「止めろ!!」

俊敏な動き。土方は神楽の前に入り込んだ。即ち振り落とされる刃の前に‥‥。
次の瞬間には土方の肩からは血が流れていた。

「!?」

「銀時。お前ら仲間だろ」

「‥‥仲間?」

土方は銀時の一瞬の迷いを逃さなかった。手首を手套し剣を手放させた。土方は自分の方に銀時を引き寄せ抱き締めた。

「早く思い出せ」

自分が近藤を慕っているように神楽もまた同じようにに銀時を慕っているだろうと。その思いは小さな奇跡を生んだ。

「‥‥ひじ‥かた‥…?」

まだ薄っらとだが、銀時の記憶の点は光始めた。




翌日。
点が見つかってしまえば線に繋ぐのはあまりにも容易かった。
「大丈夫か?」

「ったくおめぇは」

入院を余儀無くされた土方は病室で微笑んだ。銀時をしっかりと抱き締め長いキスをした。


そこにいたのはいつもの変わりない銀時だった。




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