日和

□旅の一幕
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「きて――さい」

「ん…」

「―きてください」

「…ぅー、もうちょっと…」

「…。」


ガバッ!!


「起きなさい!!」

「ふあっ!!」


おもいきり布団を剥ぎ取られ、必然的にコロコロと転がってしまった。

目を開けると、そこにはよく知った男が一人。


「う、あ、曽良君!? どうしてココにいるの!?」


「名無しさんが来ないから、迎えに来たんですよ。

早く支度しないと置いてきますよ?」


「うそ!?」


急いで外を見てみると…、もう日は高く昇っている。

これは曽良君がわざわざ来てくれるのも無理はない。

というか置いていかなかったのが、奇跡だ。


「い、今すぐ支度するっ!!」

「急いでくださいよ」


そう言って、曽良は部屋を出て行こうとし…

襖を跨いだところでまたこちらへスタスタと戻ってきた。


「? どしたの?」

「忘れ物をしました」

「え! どこ!」

「ここに」


そう言うや否や…、曽良君の眉目秀麗な顔が、自分のそれと重なった。

触れるだけの、短いキス。

でも刺激としては充分すぎるほど充分で…。


「…ふえ!?」

「これで少しは頭がハッキリしたでしょう。

早く支度しないと、本当に置いていきますから」

「え! ちょ、まって!! 早くするから!! 置いていくのだけは!! 曽良様!!」




…そうして、騒がしい旅の一日がまた始まるのだ。










旅の一幕












(あ、曽良君!! 名無しさんちゃん起きてた?)

(ええ。まぁ、起きてはじめに見るのが自分というのは、なかなかいいものですね)

(え、どうゆうこと?)

(…いえ、何でもないです。芭蕉さん、今日こそは真面目な俳句を詠んでくださいよ)

(な!マッスオはいつも真面目だ!! マジメマッスオ!!)

(…この下手男がッ!!)

(弟子がバイオレンス!!!)




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