Tales of

□I do not hand you
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「まったく…。シェリアはもっと風紀を気にするべきです!」

「あははー。まぁそう言わなくても」


街についての各自の自由な時間。

私たちは、眼鏡に指をあてて不満をぶつける彼の話を、適当に聞き流しながら二人並んで座っている。

シェリアのスカートについては日頃から彼が気にしていたこと。

ずっと我慢していたのもあって、彼のいつもの落ち着きは等に何処かへ行っていた。




「名無しさんはなんとも思わないんですか!?」

「え、いやぁ可愛いとは思うけど…」

「そこじゃないでしょう!!」

「うおっ!…ヒューバート、かなり鬱憤が溜まってたんだね…」



苦笑を浮かべながら答えると、流石の彼も騒ぎ過ぎたと気づいたのか眼鏡を中指で押し上げてこちらを向いた。



「…すみません。取り乱しました」

「いいの。気にしないで」


にこりと笑顔を見せると少し顔をそらしてしまう。

普段冷静な彼のこういう可愛い一面は大好きだ。

からかって遊ぶのもいいが…今日だけは顔が少し赤かったのは見なかったことにしてあげようではないか。



しかし、彼が怒るのも少しは分る気がする。

確かに凄く可愛いし、似合っているのだが…だからというか何というか。

あの短いスカートは結構刺激が強かったりするものだ。

でもあんなヒラヒラな可愛い服は女の子なら誰もは一度は憧れる。

実は私もその一人だったりする。



「でもほんとシェリアの服可愛いよねー。凄い似合ってるし!

あ、今度貸してもらって着てみようかな?」

「ああ、いいんじゃないですか?」

「あ、いいか…!…な…?」



…。

……あれ?


「えと…ヒューバート君今何て…」

「は? 二度も言わせないでください。いいと僕は言ったんですよ」


変にわなわなと震えてしまう。

あれ、今彼は何と言った?

シェリアは駄目で…私ならいいの?

私にはそんな魅力が無いとでも!?確かにそうなのかもしれないけど…!!でも…!!

面と向かって言われると結構…いやかなり傷つく!!




「…ヒューバートのばかぁっ!!」

「はぁ!? い、いきなり何言うんです!!」

「シェリアは駄目なのに私ならいいの!?」

「ちょっ!名無しさん落ち着いてください!」

「だ、だってー!!」

「ああ、もうっ」


完全に我を忘れている私と、どうするものかと戸惑う彼。

しかし、そう言うや否や、彼はぐいっと腕をひっぱり私を引き寄せた。

すぐ目の前には眉目秀麗な彼の顔。

その強引な動作とは裏腹に、唇に柔らかなものがふわりと優しくと重なった。


「僕がいつ何時みなの前で着ていいと言いました」

「…え?」

「そういう服は僕の前だけでならいい、という意味ですよ。他の男の前でなんて、死んでも着させません」


その言葉を理解したとたん顔が真っ赤に染まった。

早とちりしたことの羞恥もあったが、それよりも彼がした行動と言葉に。

恥ずかしさと嬉しさが混じり合って、なんて言えばいいのか分らなくなってしまった。


そっと手を私の頬に滑らせ、妖艶な笑みを私に向けた。

「…そんな顔も、僕の前以外では禁止ですよ?」






I do not hand you


Because you are mine
何故ならあなたは僕のものだからだ













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