Tales of
□水面の月
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「なぁ。月、見にいかねェ?」
最初はルークの言葉からだった
「月…ですの?」
「うん」
宿で夕食を済ませたあと、行き成りの誘いに、ナタリアは少し目を丸くした
…いつもなら、こんな事無かったのに…
いつもなら、ナタリアが誘って誘ってデートにいく
なのに今度は…
(レムの塔に行ったあとからルーク、何か変ですわ…)
ナタリアは戸惑いを隠せず、少々不自然な笑顔でルークに向き直った
「な、なら他の皆も誘ったほうがよいのではなくって?
皆で見たほうがきっときれ…」
皆がいる部屋に行こうとルークに背を向けたとき…
まるでガラスか何かを扱うように優しく抱きしめられた
其処にあると確かめるような…。でも少し気をひいているような
ルークはナタリアの首筋に顔をうずめた
ナタリアは不意の出来事に顔を赤く染める
「…ル、ルーク?」
そう言うと、ルークが小さな声で呟いた
「……………む」
「…どうし…」
「…頼む…」
消え入りそうな、少し擦れた小さな小さな声だった
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