書物
□お絵描き
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気持ちのいい昼下がり。
安倍邸では昌浩が庭で遊んでいる。
その様子を晴明と紅蓮が少し離れた場所から座って見ていた。
昌浩はさっきから白い小さな蝶を追い掛けている。
しばらくすると追い掛けるのに飽きたのか、何やら地面を削り始めた。
ガリガリガリ―――……
ほほえましく昌浩の様子を眺めている。
ガリガリガリ―――……
「何をしているんだ、昌浩は?」
「削っているだけだろう。」
そんなことを話している。
ガリガリガリ―――…
昌浩はずっと削っている。
だが一向に止める気配はない。
さすがに、
「おい、晴明。庭がボロボロになるんじゃないか?」
と心配し出した。
「そうだなぁ…。子供の力は意外に強いからのぅ。だが楽しそうにしている昌浩に止めろと言うのは、少し可哀相な気もするが…。」
2人がどうしようか思案していると、
「じーまぁー!れーん!」
昌浩が2人を呼んだ。
「何だ、昌浩?」
「こっち来てー!!」