書物


□大雨
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「大丈夫かしら…?」




安倍邸の一角にある部屋で彰子は呟いた。




ついさっきまでは晴れていたのに、急に雨が降り始めたのだ。


しかも昌浩が帰る時刻に。



「昌浩、簑(ミノ)を持って行かなかったわ。きっと濡れてしまう。」
「昌浩様には雨よけの術があるのではないですか?」


天一は彰子の心配を少しでも和らげようとして言う。


「でも…。あ、そうだわ!私が昌浩に届ければいいのよ!」
「それでは姫が濡れてしまいます!」
「いいの。昌浩と同じことがしてみたいし。」



安倍邸に来るまではほとんど外に出たことが無かった。
安倍邸に来てからは市にも行ける。

だが、雨の日には外に出たことはない。だから行きたいと言う。



その思いを聞いた天一と朱雀は渋々それを了承した。


晴明に言えば「行っておいで」と簡単に言われたのだが…。





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