liar×unfair×Game

□毒入りスープ











ふと目を覚ますと長谷部は見知らぬ場所に居た。
辺りをゆっくりと見回すと、剥き出しになったコンクリート壁に木製の扉・錆びた鉄の扉・真っ白な扉・小窓付きの大きな扉が四方に配置されている。
おそらく自分が居る部屋は正方形の部屋だろう。

「・・・・うっ・・・。」
「・・・っ!?」
「・・・・こいつは驚いた。」

部屋に居たのは自分だけではなかったらしい。
それぞれ辺りを見回している。
その姿は見覚えがあるどころか馴染み深い相手達だ。

「廣光、燭台、鶴屋か?」
「おお!君達も居たんだな!?」
「・・・・・・・・藤乃。」
「あれ?僕は自室で寝てた筈なんだけど・・・?」
「誘拐か!?」
「鶴さんなんでそんなに嬉しそうなの?」

燭台の言葉に鶴屋が嬉しそうに反応する。

「・・・・・それよりも此処は何処だ?」

先程より落ち着いてしっかりと辺りを見渡す。
壁と床はコンクリートで出来ており、自分達はどうやら床で寝ていた様だ。
天井には薄暗い豆電球のみが部屋を照らしており、真ん中に古い木製の長机と椅子が一つずつあり、机の上には木製の器に入った薄黒く紅い無臭のスープが四つ置いてある。
そして自身が身につけている服はパジャマではなく、白い検査着の様な服に変わっている。

「・・・・机にあるのはスープか?」
「何のスープだろう?」

燭台は湯気の出ているスープを手に取り、じっと見つめるがぱっと見はトマトスープにしか見えなかった。

「お?椅子の上に紙が置いてあるぞ。」
「紙?」
「一枚目は地図みたいだな?」

そう言って鶴屋は一枚目をテーブルに滑らす。
それを三人が上から覗き込む。
それは鶴屋が言うように地図のようだ。
スープの部屋、と書かれた四角形のそれぞれの辺に、さらに四つの四角形が隣接して書かれており、それぞれ上から時計回りに『調理室』、『礼拝室』、『書物庫』、『下僕の部屋』と書かれていた。

「スープの部屋は此処か?」
「そうだろうね。周りに扉が四つあるしスープもあるから。」
「・・・・もう一枚は?」
「帰りたいなら 一時間以内に 毒入りスープを飲め。
 飲むまでは 君じゃあここから 出られない。
 一時間以内に 飲めなかったら お迎えが来るぞ。だと。」

そう鶴屋が紙の内容を読み上げ、さらに三人に見えるように、地図と同じくテーブルの上にメモ用紙を置いた。
三人が同じくメモを覗き込むと、同じことが書いてあるのが分かる。

「お迎え?死神でも来ると言いたいのか?」
「さあ?」
「あれ、この紙の裏何か書いてある。」
「本当だな。」

ぺらりと燭台が持っていた紙を裏返し、隣に居た長谷部もそちらを見る。

『暖かい 人間の 血の スープ 冷めない 内に 召し上がれ』

そう赤い文字で書かれた紙を見てしまった二人は反射的にスープを見る。
燭台はたちの悪い冗談かもしれないという思いがあったが、探偵をして多少の流血沙汰を経験している長谷部はあのスープが本当に人の血で出来たスープだと確信してしまう。
そのとたんに無臭のスープが鉄錆の様な血腥い匂いを感じ取り、一瞬血の気が引いた。

「長谷部君大丈夫!?」
「おいどうしたんだ二人共。」
「藤乃?大丈夫か?」

燭台の声にもう一枚の紙を見ていた二人の視線が長谷部に向かう。

「ああ、大丈夫だ。寝起きの所為か少しふらついただけだ。」

二人の視界に紙の裏の文字が見えない様にすかさずその紙を握りしめる。

「・・・・・無理はするな。」
「ああ。」
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