白藤の約束

□悪夢への道
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国重が加州達と契約をして三日が経った。
契約後すぐに兄達が待つ家へと三刀を連れて戻り、心配性な兄達の熱烈なお出迎え攻撃を喰らった。
そして兄達には説明しなくても幼馴染み達経由で大体の事情を知られていたので手間が省け、彼等はめでたくバイルシュミット家の住人となった。
契約した事によって彼等は分霊でなく”個”となった為、刀剣男士としてではなく個人の名前を国重から貰い更に深い契約となった。

「母様!髪の毛梳いて!」
「良いぞ。おいで乱華。」

あれから乱は国重の事を”母”と呼ぶ様になった。
元々国重が刀剣だった頃から懐いていたが、契約してからは前以上に甘やかされた所為か乱基乱華が最も国重にべったりになった。

「本当、乱華は国重にべったりだね〜。」
「そう言う蓮華も姫さんに引っ付いてるだろ?」

国重の背中に寄りかかって引っ付いている加州基蓮華を見て、薬研基藤夜が呆れ顔になる。

「乱華の髪結いが終わったら、俺の爪デコってもらうからくっ付いてんの!だからたまたま!」

そう言って、持っていたマニキュアボトルを揺らして見せる。
その色は何時もの赤でなく”藤色”だった。

「藤夜も羨ましいなら来れば良いじゃん。」
「うん?藤夜も来るか?」

一旦乱華の髪の毛から手を離し、藤夜に向かって腕を広げる。

「いや、遠慮しておく。俺っちみたいなのが姫さんに甘えるのは柄じゃねぇしな。それにちと恥ずかしいしな。」
「難儀な性格だよね〜?甘えたいなら素直に甘えれば良いのに。ね?」
「ね〜?母様なら目一杯甘やかしてくれるのに。」

更にベッタリとくっ付きながら、二人はニヤニヤと笑う。
一人だけ断られてしゅんとしているが。

「・・・・藤夜は私に触れられるのが嫌なのか?やはり、人になっただけでなく女になってしまった俺は気持ち悪よな・・・。すまない。」
「・・・あ〜あ!藤夜兄が母様落ち込ませた〜!ギルちゃんとルー君に藤夜兄が母様泣かせたって言っちゃうんだから!」

落ち込んだ国重を見た乱華が頬を膨らませて藤夜を軽く睨みつける。

「一期並みのシスコン・・・まあ、あっちはブラコンだけど。それと同じくらいの兄馬鹿を敵に回したら面倒なんじゃない?」

乱華に便乗して蓮華が更にニヤニヤ笑いながら言う。

「〜っ!くそっ!姫さんの言い方は狡いぜ!乱華と蓮華は卑怯だぞ!」
「何とでも!母様悲しませるのは僕が許さないから!」
「・・・・・っ!これで!勘弁してくれ!」

顔を真っ赤にした藤夜が国重を横から抱きしめる。

「流石に抱きしめられるのは俺の面子が立たたねぇから、これで許してくれ!」
「・・・・藤夜は温かいな。」

藤夜に抱きしめられた国重が嬉しそうにすり寄る。

「〜っ!!!!姫さん、頼むから黙ってくれ・・・。顔から火が出そうだ・・・。」
「藤夜可愛い〜!短刀らしいとこあんじゃん!」

羞恥心で真っ赤な藤夜の頬を蓮華が突つく。

「・・・蓮華五月蝿い!」
「お前も照れるんだね〜?いや〜、いーもん見た!」
「いやはや、ほんに楽しそうだな?俺も混ぜてはくれぬか?」
「「「「え?」」」」

かすかに聞き覚えのある声が不意に聞こえてくる。
声がした方を皆一斉に見た。

「・・・・は?」
「え?」
「はぁ!?」
「あ。」
「我らが可愛い藤よ。爺が遊びに来たぞ。」

そこに居たのは瞳の中に月を持った、青い狩衣を着た天下五剣が一人、三日月宗近だった。
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