白藤の約束
□悪夢の強制終了
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「この役立たず!!」
耳障りな金切り声を上げながら豪華な打掛を纏った少女が持っていた扇子を床に目掛けて叩き付ける。
床に叩き付けられた扇子は金と紺の装飾が壊れ使い物にならなくなる。
「申し訳ございません。」
下座にて頭を垂れ続けるへし切長谷部は静かに目を閉じる。
「御託は良い!!そんな暇があるならさっさと出陣して三日月を連れて来なさい!!」
ずかずかと作法も何も無く上座から降りて来た少女は長谷部の顔を無理矢理上げさせ容赦無くその頬を叩く。
本来なら難なく避ける事も出来る少女の張り手を長谷部は避けなかった。
自身の頬を叩いたのが主である審神者だったから。
長谷部は抵抗しない。
全ては主の思うままに。
そう言う刀だから。
「必ずや三日月を主に献上致しましょう。」
そう言ってまた頭を少女に・・・主に向かって下げた。
夜の気配が色濃くなった本丸の廊下を長谷部は身体を引き摺る様に歩く。
軽傷とはいえ、連日の連続出陣に身体の方が悲鳴を上げているからだ。
それでも長く休む訳にも行かず、少しでも効率良く休める様にと思いながら自室を目指す。
意識が朦朧とし始めた時だった。
ぎしりと自分以外の足音が後ろから聞こえてくる。
「・・・・はせべ。」
「・・・・長谷部。」
「・・・今剣と国俊か。」
そこには泣きそうな顔をした今剣と愛染国俊のニ振りが居た。
「どうした?今日の遠征で何かあったか?怪我でもしたか?」
「・・・・してません。ただしゅつじんぐみがすうこくまえにかえってきたのにはせべだけがかえってこなかったから・・・。」
「もしかして折れたんじゃないかって俺等心配したんだぜ?」
泣くのを堪える様に両手を強く握りしめるニ振りの頭をそっと撫でる。
撫でられた事によって我慢出来なくなったのかニ振りは同時に長谷部の腰に抱きついた。
抱きついて来たニ振りを長谷部は抱き抱えそのまま自室に向かおうとした。
「・・・あれ?長谷部君?」
ひょっこりと向かい側から燭台切が顔を出す。
「・・・・・・燭台切か。」
「今帰ってきたの?随分と遅かったね?」
「いや、部隊は数刻前に帰って来ている。俺は先程まで主に報告していたんだ。」
「・・・・そう。」
長谷部の言葉に燭台切が眉をひそめる。
「俺は部屋にこいつ等と一緒に戻る。お前も早く休め。」
「・・・長谷部君後で部屋行くから。」
「は?」
言うだけ言うと燭台切はさっさと自室に向かって行った。