福音を花に籠めて貴方に送る

□秘密の御茶会
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ピロンッ
ポケットに仕舞っていたスマホから通知音が鳴った。

−今空いているか?大丈夫なら俺の部屋に来てくんね?−

ジョインを開くと通知の主は金城からのようだ。

−大丈夫だ。今からそっちに行く。−

丁度暇が出来てリビングでくつろいでいた所だったので了承の返事を送った。

「あれ?百、随分と嬉しそうだね?何かあった?」

偶々通りかかった増長が首を傾げる。

「そうか?」
「うん。珍しく頬が緩んでるよ?」
「・・・・・・・気付いてなかった。」

増長の指摘に思わず自身の頬に触れる。

「最近スマホ見て楽しそうにしてるけど・・・。」
「ああ、最近金城と仲良くなった。」
「剛士と?」
「舞台の仕事で一緒になってから良く話す様になって最近、本の話しになって好きな本のジャンルが被って意気投合した。」

霊力調整の件で金城と良く会う様になり、それ以外でも食事に行ったりオフを共に過ごしたりする様になったので、誰かに知られた時に変に勘ぐられない様にする為に二人で考えた建前(一部真実込み)を言う。

「え?二人の本の趣味が被るとか意外。それより剛士って本読むんだ・・・。」
「ああ。俺も知った時は吃驚した。」
「で?二人の好きな本のジャンルって?」
「歴史ものだな。戦国時代とか幕末時代とからへんの話しがメインで出て来る。」
「あー、そういう・・・確かに百と剛士が好きっぽい。」
「で、借していた本が読み終わったから返すってさっき連絡が来た。そのついでに昼を一緒に食べようと思うからあっちに行って来る。」

そう言って音済が立ち上がる。
あちら側にすぐに行くと言っておいてこれ以上時間を此処で食うわけにはいかない。

「そっか。夕飯はどうする?」
「まだ決まって無いから後で連絡した方が良いか?」
「そうだね。今日は俺達二人と帝人の三人だけだから。」
「分かったなるべく早く連絡する。行ってきます。」
「うん。行ってらっしゃい。」

増長に見送られながら音済は部屋を後にした。
そして迷い無く金城の待つTHRIVEの部屋へと向かう。

「金城。すまない遅くなった。」
「いや、大丈夫だったか?もしかして忙しかったのか?」

そう言って出迎えてくれた金城の姿は何時もの姿では無く、最近見慣れ始めた少女の姿だった。

「悪いな。また霊力暴走した。」
「みたいだな。」
「もう少し自分でどうにか出来れば良いんだけどよ。無理だった。」

へらりと泣きそうな笑みを浮かべる金城。
最近霊力暴走の頻度が多くなっている所為か思っていた以上に参っている様だ。

「いや、構わない。そもそも俺から言い出した事だ。気にするな。」
「ん。」
「その姿で部屋の中を出歩いているという事は二人は居ないのか?」

幻術を解いた状態で女の姿で自分の部屋から出てうろついている金城に音済が尋ねる。

「ああ。藍染は女のとこで阿修は眉麻呂と遊びに行った。だから今日は夜中まで俺一人だな。」
「そうか。なら昼は二人で、夜はリーダーとみかと一緒に食べないか?うちも今日は夜は俺を入れて三人だけらしいから。」
「・・・良いのか?」
「構わない。さっきまでリーダーと居たからな。お前の所に行く事は伝えてある。」
「そうか。それなら夕飯は俺が作る。材料の賞味期限がそろそろやばいけど中々片付かねー。」

苛ついた口調とは裏腹に寂しそうな表情を浮かべる金城。
その様子から最近は夕食を一人で摂っている様だ。

「一人御飯が寂しかったらうちに来れば良い。必ず誰か居るから。それか俺を誘ってくれれば良い。仕事中じゃなければ何時でも大丈夫だから。」
「・・・・前はさ、大丈夫だったんだよ。」

増長と釈村にメッセージを送る音済の傍で金城が俯きながらぽつりと呟く。

「ん?」
「最近まで・・・つか、霊力暴走が酷くなる前。」
「ああ。」
「女になるとさ、情緒不安定になりやすいみたいでさ、何か前は一人でゆっくりするのが好きだったし静かな空間に一人でも落ち着いて居られたんだけどさ、今は一人で居るのが寂しいし怖い。」

金城が自身の胸元のシャツを握りしめて震える。
その姿は泣きそうなのを一生懸命堪えようとしている子供の様で、普段の自信家で少し口が悪くてストイックな姿からは考えられない位に弱々しい姿だった。

「そうか。」
「でも、そんなこと阿修や藍染に言える訳ねーし・・・オフの日はなるべく飯時に帰って来て欲しいなんて、さ。今まで平然としてたのに急にそんな事言えばさ、この体質の事をバラさないとだし・・・。」
「なら俺が居る。流石に何時もは無理だがオフが重なった時は一緒に食事を摂ろう。そうすれば少しは寂しさが紛れるだろう?」
「・・・良いのか?」

躊躇いがちに金城が顔を上げる。
が、目線は合わない。

「ああ。それに二人きりでなくても今日の夕飯みたいに空いてるメンバーを誘って食べよう。」
「・・・・・百太郎。」
「何だ?」
「有り難う、な。」

そう言って金城がふわりと笑った。
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