架けた流星

□【真正面から】
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休憩時間になるも、雪は誰とも顔を合わせず、口も利かず、自席に座ってじっとしている。
それを見たクラスの皆はこそこそと雪について喋り合っていた。

真歩は、雪が外国に行ってから転校してきたので、雪と私との接点は知らない。
親友だった事を話すと、辛そうな顔で私を見つめていた。

「アンナちゃん・・喋りかけてみたら?」

「・・・・きっと覚えてないよ」


もし、私をほんとに覚えてなかったとしたら――
きっと、傷ついて、見るのが辛くて、もう二度と友逹には戻れない気がする。



「――神山、聞いたぜ?お前の親の噂」

暫くすると、クラスで一番のやんちゃな男子の福戸野亮一が雪の目の前にやってきて思わぬ発言をし、クラス中が騒ぎだした。



『・・・なんのこと?』

「とぼけんじゃねぇよ!!お前の親弁護士なんだろ?犯人じゃない奴を犯人だと言ったって聞いたぜ。」

『…』

「結局、その犯人は死刑が決まって、それに納得いかない犯人の友人はもう一回裁判を起こしたとかって。」

『…』

「その犯人は犯人じゃなかった。でも殺された後で、それを恨んだ友人は、神山の両親を殺したって。」


『―――殺された?』

雪は辛い表情ながらも、福戸野の話を聞いているようだった。ただ、何か言いたそうな表情をしていたが、相手の次の発言で顔が凍りついた。


「お前の親が間違えたから殺されたんだよ、殺されても文句いえねぇだろっ
お前の両親が殺したようなもんだからな」


『い…や…ぅううああぅ、うッあああっ…ッ!!!!!!!!!』

突然雪が悲鳴を上げた。視点が定まっていない様子で、キョロキョロと目を動かし。すぐに視線が下を向いた。


過去の惨劇を、思い出している様子だった。

遅れて両手で耳を塞ぎ。足の筋もふるえて、いつの間にか膝からガクリと床に落ち、泣く声が教室中に響いた。

誰も、誰も雪に駆け寄る姿が無く、観衆のようにじっと見つめていた。

私も、足が動かなかった。


それを嘲笑うように見た福戸野は、急に私の方に視線を向けニヤリとした。

「そういや美笠ぁ、お前神山とダチだったよな」

「ッ!!!」
急に私に振られ、心臓が止まる思いだった。心拍数が上がって、手や額に嫌な汗が湿り始める。

「どうせお前、裏切られたとか思ってんじゃねーの?」

「そ、そんな事!」

「だって、今だってこいつの事避けてるじゃん。忘れられた恨みなんだろ」

「っ!!」

泣いていた雪が顔を上げ、私の方へ向けた。赤い目で、私を怖がるような絶望した様子だった。

怯えるような掠れた声で私の名前を呼んだ。



『・・み・・みかさ・・・さん』



違う。

違う。

そうじゃない。



声が…出ない…?


こんな雪を見たかった訳じゃない。
前みたいに。
ここから転校する前の、いつもの笑顔が見たかった。

声が聞きたかった。

それだけなのに…。


何で

何で、皆を


私を
忘れてしまったの

忘れてしまえるような、友情だったってこと?

「うわああああッ!!!!」


この空間に、居られない私は、すぐさま教室から逃げ出した。



最低だ

最低だよ

こんな時だけ、足が動くなんて。

こんな時だけ、逃げれるなんて。








雪に忘れられても、仕方ないことだ


そんな、汚い人間なんだから。




「はぁ…はぁっ…」

廊下から、私の声だけが鈍く響く。


誰も、誰も見たくない

消えてしまいたい・・・・!!!
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