架けた流星
□【欠片】
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〔雪、こっちよ。〕
〔こっちだ…雪。〕
はあはあと息切れがしても、林の中を全力でかけ駆け巡っていた。
枝葉の隙間から降り注ぐ光のオーロラが優しく肌を温め、一瞬眩しさで目が眩みそうになる。
でも今は、それさえも愛しい。
懐かしい風景と二人の声。私はそれだけで胸が高鳴って、心躍っていた。
(ま、まってよ・・・・、ッぐぎゃ!!
〜ッ!!いったーいッ!・・・)
小さな小石につまずいたようで、景色が反転して体中が草花に包まれる。
全身に痛みが溢れ目尻に涙が溜まっていく。
〔雪、大丈夫か・・。〕
〔雪、起き上がりなさい。〕
地面にうつ伏せになりながら、頭だけ上に動かして声がするほうへ顔を向けた。
逆光のせいで、顔がよく見えないけど、たしかに私のよく知っている人物だ。
(うぅ〜ッいたいよ・・・・)
〔さあ、自分で立ちなさい。ここでずっと横になってると、おばけが出るわよ。〕
(!!?ッお、おばけええ??)
私はその一言で、飛び上がるように起き上がって、声を掛けてくれた人物に抱き付いた。
さっきまでの痛みが一瞬で引いて、震えるようにしがみ付いた。
〔ふふっ、雪はおばけが怖いのね?〕
(ぅん・・だって、おいかけてくるでしょう?しんじゃうかもしれないし)
〔大丈夫よ。そんなの私が懲らしめちゃうから。〕
(とっても、とーってもつよいおばけだったら?)
〔なんなら、俺が懲らしめる。雪に目につく前に――〕
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≪雪、おいッ雪!!≫
≪雪!いつまで寝てるんだ≫
誰かが私を呼んで、体を揺さぶってくる。
誰かが、起こしに来るなんて、そんなこともうないって思ってたのに。
『ん〜まだねむいってばーママ・・朝ごはんは・・目玉焼きと・・・ベーコンが』
もう少し、寝かせてよ。
体中が心地よくて、目を覚ましたくないって言ってるみたいだからさ。
だから、ごめんねママ。
おやすみなさい。
≪・・・そういえばこいつ、なんで一人なんだ≫
ヤミの疑問に、誰も答える者が居なく、言葉が宙に浮いて消えていった。
『・・・・・・むにゃ』