架けた流星

□【黒い人】
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8月1日。

重い体を動かしながら時計を確認すると針は深夜12時を示していた。

『ん、眠い…』

空気も澄んでいて、虫の声も僅かに聞こえる。
夏でも夜になるとかなり気温が下がる、寮は山手なので、虫も多い。

部屋の電気をつけるとすぐに虫たちが窓にへばりつき始める。
最初は気持ち悪くて殆どカーテンを閉めていたが、慣れって怖いものだとつくづく感じた。

今日は、私服でも良いようなので、肌寒いしTシャツの上に薄手のパーカーを羽織って、虫刺され予防にデニムパンツをはいて集合場所へと向かった。


いつのまにか夏休みが数日過ぎ、今から歓迎会が始まろうとしている。
もちろん新一年生は全員参加で逃げられない状況だ。

私と同じ気持ちで参加する人もいるはず、いたらこの気持ちを分かち合いたい…。

このイベントをぶち壊してやろうかと考え付いたが、こんなことで評価を下げられたくないし、卒業するまで非行少女とレッテルを張られ続ける想像をしていくうちに冷静になって馬鹿みたいだと感じて止めた。

「一年代表三笠アンナです。今から先生の代わりに私が注意事項、ルールなど簡潔に述べるので静かに聞いてください――」

生徒の点呼が終わり、アンナからの説明が始まった。
ざわざわしていた人達が皆静まりアンナに注目している。
しっかりしてるし、同い年なのか今でも疑いたくなる。

「アンナちゃんかっこいいねぇ〜」
『そだね…』


「―以上、説明を終わります」

誰からともなく拍手がされ、また周りがざわざわし始める。
ようやく説明が終わったアンナが私達のところに戻ってきた。

「アンナちゃんお疲れ様ぁ、かっこよかったよ〜」
「ありがと、それにしても雪が休まずに来たのは驚きだな。」
『・・・』

ズル休みしようと思ったけど、後で内申点に響くって聞いて、無理やり体を動かした。
そういうとこズルいよなあ。


「とりあえずもう一回説明するから、ちゃんと聞いといてよ。」
『「はーい。」』

アンナの説明によると。
私・アンナ・真歩のチームで校庭からスタート、道沿いには目印になる先生方が点々と立っててくれてる。
その先生から色のついた木札をもらい(全5個)、目的地のお寺を通り、裏のお墓で先生と木札を交換する。
交換してもらった木札を帰り道に立っている先生方に見せ、校庭に戻り教頭先生に確認してもらうと終了。

何やらクリアできると景品が貰えるそうだ。

「へぇ〜何貰えるんだろーね?アンナちゃん知ってるんでしょ?」

「知らないよ、でも男女共通で使えるものにしようってのは聞いたけど」

『なるほどね』


話をしている間に順番が近づいてきて、マイクでリーダーの名前が呼ばれる。


〔次は三笠のチーム!スタートしろ〕


「いくよ」

アンナの掛け声と共に決心して、足を進めた。







トクン__トクン__トクン


心臓の音が聞こえ無いくらい、私は冷静だったはずなのに。

心臓だけは正直で、いつもより早いのだ―――
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