架けた流星

□【後悔】
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雪は、寝てしまったことについて、反省と後悔の溜息をついていた。

寝ていなくても結果は変わらないと思うが、反対する生徒が居ると知ってもらえば、何らかの対策を取ってくれると思っていたから。

雪の学校では、夏休みに入ると毎年恒例になっている(歓迎会という名の)お寺で肝試し大会が行われるのだが、それの参加が今年から強制になってしまったらしい。
去年までは自由参加だったが、あまり集まりが良くなくて、人数が段々と減少傾向に陥ったようなのだ。
教員の中には怖いもの好きが多数いるようで、このままだと開催中止になると教頭に悲願し、何故か途中で校長に話が行った。
それを知った校長は"伝統になっているイベントを廃れさせてはいけない!"との熱の入れようだったようで、強制参加と会議で決まったらしい。最悪なことに校長も怖いもの好きだったようだ。

雪は、幽霊などの類いは人より見えやすい体質であることを理解していて、何度か霊から挨拶という名の攻撃を受けている。それから大の苦手意識を持っていて今回はなんとしてでも参加しまいと心に誓っていた。
面倒事に遭いたくないと担任にも拒否の意向を示していたのに結果、このような事になってしまったのだ。

面白半分で幽霊に挑発をするなんてろくなことが無いのに。一度、霊傷害に遭えばいいんだと、雪は恨みの心の声を外に分からないように溜め込んだ。

「あんたが寝てる間に説明もあったし班とかも全部決めたの!後で文句言うなら起きてりゃ良いじゃない。馬鹿ね」

友人に何時もの冷たい声を掛けられ、机に体を預け再び闇の中に沈んでいく。
それを横目で確認しながら、アンナは肝試しに向けてのパンフレットの作成に取り掛かっていた。
なんでも5限目に肝試しの役員決めや、班など色々な決め事もあったみたいなのだ。
そのなかでアンナはリーダー&書記役を引き受けた。
前からリーダーシップもあったし、現にクラス委員長も務める役員好きだ。事務的な事から指示係まで幅広く活動しており、教員からは尊敬の目で見られているようで、私としても少しは鼻が高い。
ほんの少しだけ。

私は、強制参加以前の問題で前々から担任より告げられたことを思いだした。
以前から老朽化していたお寺の修繕が9月過ぎまで続くことにより、境内は立ち入り禁止になるという事を。

実際、中止になるものだと思っていたが、そう甘くはなかった。
工事現場側の粋な計らいで、その日1日だけ重機を学校の校庭に移す、ということで双方合意したというのだ。

賛成を挙げた人たちは皆、強制参加にして酷い目に遭えばいい。
雪はそう切に願った。
しかし、開催を求めた教師の一部は、指示・監視役といった裏方に回り込み、怖がる生徒たちを見て楽しむというような様子だったという。

なんで、みんな自分勝手なんだ。
生徒の意見を、多数決のみで決めて、数少ない拒否する生徒たちがいて、みんな表に出さないで(私を含め)苦しんでいるかもしれないのに。
もしまたあの事故が起きれば、どう対応してくれるつもりなんだ。

なんで、少数派は除外されるんだ――


雪は、教師達の、いや、大人達に対して不信感を抱きつつ、反発でもしてやりたい気分になっていた。

『こんな大人になりたくないね。生徒たちへの嫌がらせみたいじゃないか・・。』

「それは分からないわよー。
捻くれた奴ほど、案外そんな大人になる可能性があるし。」

『それ、誰の事?』

「さあ、誰だろうね〜」

アンナは雪に目を向けながら、そう言った。
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