架けた流星

□【記憶】
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ふわ  ふわ ふわり・・


とんでいくようなきもち

なんだか、身体中があったかい。懐かしい感覚がする。
日光が沢山当たった、綿のクッションのような柔らかさ。
陽だまりの匂いとぬくもり。

ゆっくりと瞼を開けると、前に人影が見える。
相手の顔には白い靄が懸かったようで、顔までは分からない。

「…き…ちゃん―――・・ゆ・・・・ちゃーん」


やさしい、懐かしい声がする。

老人の女性ではないかと声で推測できた。
だけど、それが誰だかは分からない。

見慣れない老女に私は戸惑いを感じつつも、咄嗟に口を開くが、私の声は相手には届かないようだった。


「雪ちゃん、おいでぇ」

また声が聞こえた。
私を呼ぶ声だ。

脳内に響く音がやっと言葉として構築し理解できた。
相手は私に向かって手を伸ばしてる。少し揺れたしわしわの手で。

表情は分からないが、きっと優しそうな顔で私を見てくれているんだろう。


『おばぁ、ーちゃーんっ』

すると私の後ろから幼女の声がした。

振り返ると、はち切れんばかりの笑顔を老女に向けているのが見えた。
その幼女は、私の身体を通り過ぎて、老女の元へと駆けて行った。
そして、距離がゼロに近づいたのち、ぎゅっと抱きしめられた。

ほわっ

何故か、自分も抱き締められてるかのように暖かくなった。

なんて安心するんだろう。
なんて心地良いんだろう。


いつの間にか目尻に涙が溜まり、私の両頬を濡らしていた。


夢をみてるみたいだ。


私の小さいころの夢だろう。






キーン コーン ・・・・



遠くからチャイムの音が近づいてきて、目の前が白い光で包まれていく。

体が宙に浮かんだ感覚がして、そこから遠ざかっていくように感じた。
(ま、まって。まだ・・)


老女と幼女も光とともに消えていき。私も視界が黒に包まれ、何も見えなくなった。

そして、現実の世界に放り返されるような。浮遊感が全身に伝い、落ちていく__
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