小説
□スイート・タイム
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「さぁ。今日も頑張るでござるか。」
あるホテルの一室。万斉はつんぽとして、そして寺門通のプロデューサーとしての仕事をするため、ペンをかたてに楽譜と向き合っていた。
「………、…………・・・?」
だが、万斉の手がいつものように動く事は無い。
「…………え?」
それから、この部屋に音が鳴ることは無かった。
スイート・タイム
「……おはようでござる。」
ここは鬼兵隊の隠れ船内。
テロリストの集団にはにつかない、明るい声が響き渡っている中で、その空気を壊す様な声を吐き捨て早歩きで歩いていく彼は人斬りとも呼ばれている。河上万斉である。
「よぉ。万斉…元気ねぇじゃねぇか。」
不適な笑みをもらしながら、この組の主、高杉晋助は空気なんて関係無しに喋りかける。
「…晋助でござるか。……そうか?拙者は普通だ。」
無理矢理な笑いを見せて、ふいっと踵を返す。
「……そーか。くくっ。ならいいんだがな。」
さっきまで明るい雰囲気をまとっていた船内は、心なしか冷たい空気が流れていた。
万斉と別れた高杉は、武器を輸送しに来た辰馬と船の外ではなしていた。
「晋助ー?わしに話とは何がかー?」
実際、辰馬と万斉はデキている。
今日の万斉を見て高杉は、かすかに。心配して辰馬に助けを求めようとしているのだ。
「いや。万斉の事で少しな…。(あんな万斉、使いもんにならねーし。大体息ぐるしーんだよ。)」
………心配……しているのだ……?
「バンザイ君になにかあったんか!?」
「違う違う。っつーか落ち着け。瞳孔開いてっぞ。」
「……ならいいんじゃが。」
「俺も理由は知らねーんだがな。元気ねぇっぽいんだよ。」
「なんじゃ?それは医者の仕事がかー…わしにゃできんぜよ?」
「馬鹿が。テメ俺の事ナメてんだろ?なぁ?わざとかオイ。わざとなんだろ。」
「アッハッハッー!冗談じゃきー!」
「……。まあとりあえず、テメェはあいつの機嫌直してこい。今日一日あいつやるから。」
「おー!任せるき!」
高杉と辰馬は、万斉のいない間に裏の制約を結んだのであった。