小説

□―二つのシルシ―
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「ここか…」






彼、山崎退は今、人斬りの異名をもつ河上万斉の住むホテルの一室のドアの前に立っていた。



「(やだなぁ。いくら付き合ってたって一回は斬られた身だし……でも万斉に限ってそんなこと、でもあのエロヤローの事だし斬られることは無くても下手すりゃおそ………何考えてんだよ俺っ!落ち着けそれは無いっ!以外にあいつもヘタレだ!無いっ!大丈夫だ!無いっ!……で「退殿?」



「うぉぉぉぁっ!?」
名前を呼ばれて前を向くと、驚いている万斉の顔があった。


「大丈夫でござるかっ!?」



「あ、万斉?!だっ大丈夫だよっ!」









かなり長い時間立っていた様で、万斉が普段は見せない頼りない面をして山崎の顔を見る。


そんな万斉の顔に山崎は、



「ぷっ……っ!あはははっ!」



思わず笑ってしまった



「……退殿……?」




「ごめんごめんっ。大丈夫だよっ。」



「そうか?……まぁとりあえず中へ、どうぞ。」



「う、うん!」











「珈琲で良いでござるか?」



「うん。ありがと」




コト……




と、万斉のついだ珈琲が山崎の前に置かれると、山崎の周りに珈琲の独特な香りが広がった。



「いい香りだね……」



「そうか?ありがとう」



「………、いやいやいや。珈琲がだよ。」


「……。」











珈琲の飲みながら寛いでいると、山崎が思い出したように万斉の顔を見た。


「でさ。今日はなんでまたこんなとこに呼び出したの?」




「あぁ。実は渡したい物があるんでござる。」



「渡したい物?」





万斉は机に置いていた、四角い小さな箱を持って来た。



「これなのだが……。」



「??」



遠慮がちに万斉は山崎に箱を渡す。



「受け取って頂けるか?」





「は、はぁ……」






山崎はその箱を慎重に受け取る。




「開けていい?」



「どうぞ。」









その箱を開くと、中に入っていたのは、
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