小説
□永久の音
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「………ばんさいっ………万斉っ!」
俺の声は降り続く雨の音にかき消された。
永久(とわ)の音
秋も終わりに近付いたある日、真選組内に、一つの声が響き渡った。
「副長!河上万斉を捕まえました!」
そう言うと隊員の一人が副長、土方十四郎の部屋に一人の男を投入れてきた。
どうせまた何かの間違いであろう。と、土方は興味の無い顔で投入れられ、倒れている男を見下ろす。
「!?」
その男は隊員が言った様、正真正銘、本物の河上万斉であった。
「…どうした?なにかのまちがいとでもおもったのか?」
万斉は、捕らえられたにしては余裕がある、気味が悪いほどの笑みを見せた。
「テメェ。こんな所で何してやがる。」
「捕まった。それだけでござる。」
「こんな奴等にテメェが捕まるわけねぇだろ。何企んでやがる。」
「拙者も隙ぐらいあるんでござるよ。土方殿、この方々に失礼であろう。」
「裏はなんだって聞いてんだ。さっさと答えやがれ!」
「はぁ。最近のものは短気でならん。」
「もう良い。オイテメェ等。コイツをあそこへ連れて行け。」
「……はいっ。」
「……らしーでさぁ。」
一方、たまたま一部始終を見ていた沖田が、山崎に見たままを話していた。
「万斉がつかまったんですか!?」
山崎は敵であり、恋人でもある万斉が捕まったときいて焦りを隠せない。
「多分大丈夫だと思うが、かなり煽っていたからなぁ……もしかしたら、危険かも知れないですぜぃ」
「そんな……しかもよりによって副長の拷問……!?…何もない分けないじゃないですかっ!………運が悪かったら万斉が………………死ぬ…っ!」
山崎の眼が絶望の色へとかわる。
「嫌だっ!嫌だあっ!」
「落ち着け!山崎!」
沖田がどなる。
「テメェが奴の事を信じるしかないんだよ!テメェが!奴を!万斉を好きになったのは、こういうことになるのを覚悟した上での事なんだろ!?」
「…っ……はい……」
「なら信じろよっ!信じて待ってろよ!」
「………はい。ありがとうございます、沖田さんっ」
「あっ。ごめ、ちょっと熱くなりすぎた。」
「そんなっ。ありがとございます。俺、まってます。」
「…おぅ。」