彼方時刻のデスク

□リグレット(理鈴前提)
1ページ/4ページ


「それは…プロポーズか…?」

「うん、そうかもね……」


そう…




これで良かったんだよね?




―…恭介。




―リグレット―




「おい、理樹。御飯出来たぞ?」

帰ると待ち構えている女性。
僕と鈴は卒業後、一緒に暮らし始めた。
僕は会社に勤め、鈴はペットショップで働いている。
収入は並よりちょっと下くらいだけど、不足はしていない。
ナルコレプシーは完治していないけど、会社の人は病気への理解を示してくれる


そう、不足は無い。

人並みに暮らしているのは恭介やみんなが与えてくれた『あの過酷』のおかげだ
と思う。

ちゃぶ台には白い御飯にみそ汁、魚の味噌焼き、煮付け。鈴はどうやらまた腕を
上げたようだ。
「…美味しいか?」
鈴が様子をうかがうように僕を見上げる。それに対して僕はニッコリと微笑んだ

「うん。すごく美味しいよ。」
「そうか…」
鈴は照れたように顔を伏せた。


「そうだ、理樹」

「何?」

何か意を決したように鈴が顔を上げる。


「こまりちゃんたちのお墓参り行かないか?」


触れたく無かった傷がえぐり返された。

「え…?」


『そうか…幸せにやれよ』…不意に恭介の声が蘇った。


いつかは向き合わなくちゃいけないことだった。

「あたし…こまりちゃんたちにありがとうもごめんも言ってない…」
「……鈴。」
「こまりちゃん熱くて痛くて苦しい中死んじゃった…馬鹿兄貴だって…」
「鈴…それはっ…!」
引き攣ったように声を上げる。
勝手にこっそり修学旅行について来た恭介も…死んだ。

「鈴…今度にしよう」
「今度今度って、ずっとそういってるじゃないか…!?」
「…そう…だっけ?」
「理樹…あたしがなんでお前と結婚しないか…知らないだろ…」

そういえば知らなかった。

「変わるのが嫌だった」
「……。」
「『棗』というのは馬鹿兄貴との繋がりで…」
…そうか……
「だから…」
「……。」
そこまで言うと鈴は泣き出し始めた。
事故から数年が経って僕たちのリトルバスターズに対する記憶は既に曖昧になっ
ていて…鈴は、変わらない物を少しでも多く繋ぎ止めようとしていた。

「変わるのは嫌…けど、向き合って変わらなくちゃ…ダメなんだ…」

もう一度向き合わなくちゃいけない。

受け入れて、本当にリフレインの世界を断ち切る為に……
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ