彼方時刻のデスク
□リグレット(理鈴前提)
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「それは…プロポーズか…?」
「うん、そうかもね……」
そう…
これで良かったんだよね?
―…恭介。
―リグレット―
「おい、理樹。御飯出来たぞ?」
帰ると待ち構えている女性。
僕と鈴は卒業後、一緒に暮らし始めた。
僕は会社に勤め、鈴はペットショップで働いている。
収入は並よりちょっと下くらいだけど、不足はしていない。
ナルコレプシーは完治していないけど、会社の人は病気への理解を示してくれる
。
そう、不足は無い。
人並みに暮らしているのは恭介やみんなが与えてくれた『あの過酷』のおかげだ
と思う。
ちゃぶ台には白い御飯にみそ汁、魚の味噌焼き、煮付け。鈴はどうやらまた腕を
上げたようだ。
「…美味しいか?」
鈴が様子をうかがうように僕を見上げる。それに対して僕はニッコリと微笑んだ
。
「うん。すごく美味しいよ。」
「そうか…」
鈴は照れたように顔を伏せた。
「そうだ、理樹」
「何?」
何か意を決したように鈴が顔を上げる。
「こまりちゃんたちのお墓参り行かないか?」
触れたく無かった傷がえぐり返された。
「え…?」
『そうか…幸せにやれよ』…不意に恭介の声が蘇った。
いつかは向き合わなくちゃいけないことだった。
「あたし…こまりちゃんたちにありがとうもごめんも言ってない…」
「……鈴。」
「こまりちゃん熱くて痛くて苦しい中死んじゃった…馬鹿兄貴だって…」
「鈴…それはっ…!」
引き攣ったように声を上げる。
勝手にこっそり修学旅行について来た恭介も…死んだ。
「鈴…今度にしよう」
「今度今度って、ずっとそういってるじゃないか…!?」
「…そう…だっけ?」
「理樹…あたしがなんでお前と結婚しないか…知らないだろ…」
そういえば知らなかった。
「変わるのが嫌だった」
「……。」
「『棗』というのは馬鹿兄貴との繋がりで…」
…そうか……
「だから…」
「……。」
そこまで言うと鈴は泣き出し始めた。
事故から数年が経って僕たちのリトルバスターズに対する記憶は既に曖昧になっ
ていて…鈴は、変わらない物を少しでも多く繋ぎ止めようとしていた。
「変わるのは嫌…けど、向き合って変わらなくちゃ…ダメなんだ…」
もう一度向き合わなくちゃいけない。
受け入れて、本当にリフレインの世界を断ち切る為に……