土×日

□名前
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「…梁…君…かぁ…」

誰もいない屋上で、自分で呟いた言葉に反応してか頬が赤く染まるのが分かる。
呼べるものなら、私だってそう呼びたいよ…

事の起こりは…

「ねぇ、香穂子〜」

満面の笑みを浮かべて近寄ってくる天羽に、頭痛がした。
多分話題は、昨日の事だろう。

昨日、土浦が香穂子を「香穂」と呼んでいるのを聞かれてしまった。
土浦の不注意で、天羽がは決して悪くないのだが…

なんだか恥ずかしくて天羽が去った後、土浦と顔を見合わせてしまった。

案の定、昨日の一件を一頻りからかわれて

「で、あんたは土浦君の事をどう呼んでるの?」

「…土浦君…」

「またまた〜。二人だけの時は名前で呼んでるんでしょ?」

天羽は、当然香穂子も土浦の事を名前で呼んでいると思いこんでいた。

私だって土浦の事を名前で呼んでみたい。
梁太郎君
梁君
梁太郎
梁…

心の中でだったらこんなにも簡単に呼べるのに。

声にだそうとすると、言葉を忘れてしまったかのように口が動かなくなってしまう。
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