土×日
□雨
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雨の日はキライだった。
朝から髪の毛ははねて、
外の景色は薄暗く、
学院に着くまでに濡れてしまう。
昼休みは外に出られない、松脂はベタベタするし、
ヴァイオリンの音色は響かない。
良いことなんてあんまり無くて、やっぱり雨の日はキライ、に軍配が上がる。
そう思っていた…
今までは。
「香穂…?」
土浦君は左耳からイヤホンを奪いとった私をチラッと見たけれど、それ以上何も言わない。
それは、許されている、証拠。
私も何も言わずイヤホンを付け、彼の肩にもたれかかる。
雨の日の、過ごしかた。
雨の日はヴァイオリンが響かない、と練習中に八ツ当たりした私に仕方ないなぁ…と貴方が示してくれた過ごしかた。
優しい音と、優しい貴方。
「…すき…」
小さくつぶやき、目を閉じる。
今は、雨の日が、すき。