土×日

□雨
1ページ/1ページ

雨の日はキライだった。

朝から髪の毛ははねて、
外の景色は薄暗く、
学院に着くまでに濡れてしまう。

昼休みは外に出られない、松脂はベタベタするし、
ヴァイオリンの音色は響かない。

良いことなんてあんまり無くて、やっぱり雨の日はキライ、に軍配が上がる。

そう思っていた…
今までは。

「香穂…?」

土浦君は左耳からイヤホンを奪いとった私をチラッと見たけれど、それ以上何も言わない。
それは、許されている、証拠。
私も何も言わずイヤホンを付け、彼の肩にもたれかかる。

雨の日の、過ごしかた。
雨の日はヴァイオリンが響かない、と練習中に八ツ当たりした私に仕方ないなぁ…と貴方が示してくれた過ごしかた。

優しい音と、優しい貴方。

「…すき…」
小さくつぶやき、目を閉じる。

今は、雨の日が、すき。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ