キカクモノ
□第三回web
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春…入学の季節。
私こと、日野香穂子は3年に進学した。
柚木先輩達は卒業し、月森君は留学。
そして、普通科だった土浦君は、音楽科に転科して行った…。
学内コンクールから始まり、コンサートと忙しくも賑やかで華やかだった私の周りは寂しく感じるほどになってしまった。
面倒見の良い土浦君は、会う度に私の心配をしてくれるし、冬海ちゃんは積極的に話しかけてくれる。 でも、何か物足りない、寂しい。
そんな感情をもて余し、気付くといつの間にか校門に来ていた。
歩き慣れた通学路。ぼーっとしてても無事学校に到着したようだ。
ふと、顔を上げると
「…桐也君…」
一瞬、立ち止まったように見えたが、やはり声は届いていないようで、そのまま音楽科棟に吸い込まれるように消えて行った。
はぁ…
その背中を見送ってまた、ため息が一つこぼれた。
彼とは、特別な間柄ではない…今は。
出会いは最悪で、なんて横柄な人だろう…と。