Vampire

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頭がガンガンする。
意識を取り戻した時、ブン太は最悪な気分だった。二日酔いの経験はないが、きっとこのような感じなのだろう。
こめかみを押えて、起きあがる。
ベッドかと思いきやソファーに寝させられていたらしいと、そこでようやく気がついたのは、それがあまりに寝心地が良かったせいと、ブン太が横になってもなお余裕がある大きさだったからだ。
「ここどこだよ」
豪華な応接間のようだった。
どっしりとしたデスクとソファーにテーブル。どれをとっても高価そうな造りのものだ。
他に余計なものは一切ない。
「くそっ、なんだってんだ」
『誘拐』とあの関西弁を話す男は言っていたけれど、この部屋の様子では身代金目当てではなさそうだ。だがそうなってくると思い当たるふしがまったくない。
まだぼんやりする頭をブルブルと振ると、
「よお、起きたか人間」
そう声をかけられた。
いつの間にそこにいたのか。
部屋の真ん中に位置する机。その向こうに、椅子に座ったまま薄ら笑いを浮かべている男が発した言葉だと直感した。
(この声……)
意識を失う前に聞いた、偉そうな方の男だ。
そして、机に凭れながら腕を組んでいる、もう1人の男。
(……とメガネ、ね)
こちらが忍足と呼ばれた関西弁だろう。
黙ってブン太を見ているけれど、その浮かべている表情はもう1人とは対照的に困ったような笑いだった。
「なんなんだよ、お前ら。なんでこんなことしやがる」
睨み付けると、ふっとあしらうように鼻で笑われた。綺麗に整った顔だけにその不遜さがイヤミなくらいまた似合う。
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