Vampire

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ブン太のことが好きなのだと自覚してから、ジローは必要以上に彼に触れることができなくなっていた。
いつ自分を制御できなくなるかわからない状態だったこともあるが、それ以上に照れくさいというのが一番の原因ともいえた。
それでも意識に反するように心は軽くなった。
いつまでもここにいられるわけではないと、わかってはいたけれど。
「あ……」
日課になりつつある薬を取り出してケースを振ると、カランと澄んだ音がして最後の一粒が転がり落ちる。
元々ジローには必要のないものだったから、最初から大量に持ち歩いていたわけではなかったことが災いした。
「あはは……」
(ちょうどいいタイミングなのかな……)
引き際は潔く、と決めていた。
ブン太に迷惑をかける前に、ここを去る。
そうは思っていても、出てくるのはため息と乾いた笑いだけだった。
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