Vampire

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天気は晴れだった。
小さな花壇の前にしゃがみこんだ幸村の隣で、ブン太も同じように膝を抱えて座り込んだ。
優雅に動くその指を眺めながら、けれどブン太の頭の中は昨日の夜のことでいっぱいだった。
(なんだってんだよ、あれは!)
ただ幸村の話をしていただけだった。
『幸村くんのこと好きなの?』
そう聞いてきたジローの言葉が蘇って、ボン!と頭が沸騰したようになる。
そんなブン太の様子のおかしさに、幸村が首を傾げて顔を覗きこんでくる。
「丸井、どうしたの?」
「なんでもない! なんでもない!!」
ブンブンと頭を振る。
態度が変であるのは明らかだったが、「そう?」とあえてつっこまずに作業に戻った幸村にホッとした。
好き?
幸村は友達だ。そりゃあ好きだとは思うけれどそういう対象ではない。
あまりに突然の質問で動揺したが、それは確かだ。
怪我した指先を見つめて、うーんと唸る。
連想的に思い出すのは昨日のジローのことばかりだった。
(わけわかんねぇ……)
はぁと盛大なため息を吐いたブン太を横目で見ながら、幸村は何事もなかったかのように植え替えた花に水をかけていた。

***
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