Vampire

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「幸村くん、明日も来てくれるってさ」
今日は庭の様子を見に来ただけで、手入れのための用具なども揃っていなかったので、作業は明日ということになったらしい。
そう言ったブン太の台詞はこころなし弾んでいるように感じられた。
『じゃあ、またね、芥川くん』
帰る際にも距離を保っていたジローにそう告げて微笑んだ幸村は、なるほど、ブン太が良い人と形容するのも納得できた。
初対面のジローにも優しく接してくれたし、なぜジローがここにいるのかを聞いても胡散臭そうな顔をせずに、むしろ怪我の具合まで心配してくれたくらいだ。
それなのに、「ふーん」と気のない返事を返すジローは、自分でも何がそんなに面白くないのかわからない。
幸村が帰った後も、ブン太の口から出てくるのは彼の話ばかりで。
「でさ、幸村くんが変なこと言ってたんだよな。バラがどうこうって……―――」
「ねえ、丸井くん」
夕食で使用した皿を片づけるために重ねながら、テーブルを拭くブン太を眺めて、遮るように名前を呼ぶ。
当然のことながら、話の腰を折られた形になったブン太は不機嫌そうに眉を潜めた。
「幸村くんのこと好きなの?」
唐突の問いかけに、ブン太の手から滑り落ちた皿が、テーブルの上で粉々に砕けた。
がしゃん!と耳を裂く派手な音。
「おまっ…! 幸村くんは友達だろぃ!」
否定しながらも焦るブン太の姿を、ジローはどこか冷静に見つめていた。
「友達?」
「そう、友達! 大事な友達!」
「大事な……?」
なぜか胸がちくりとした。
そのわけのわからなさに胸を押えるジローを尻目にブン太は、お前が変なこと言うからと、ぶつぶつ文句を言いつつ、割れた皿の欠片を集め始める。
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