Vampire

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ジローと名乗った少年は、どうにもあまり人見知りなどをしないタイプらしい。
初めは得体の知れない人間を置いておくなんて冗談じゃないと思っていたブン太だったが、それでも最終的に承知してしまったのは、その人懐こい笑顔のせいだったのかもしれない。
とりあえず怪我が治るまでという条件つきで家に置くことにした。幸いにも家族が旅行に行っている間は自由に振舞えるため問題は無かった。
さしあたってすることもなく暇であったし、何よりその非常識な出逢いが興味を引いた。
「……それにしたってよく寝るやつだな」
ソファーで眠るジローを見下ろしてブン太が呆れたように呟いた。
昼も夜も関係なしによく眠る。
最初の晩に落ちて頭を打ったせいかと危惧したりもしたが、それがジローの日常だということもわかった。
「せめて客用の布団でも敷くか……?」
腕を組んでその寝顔を眺めながら考える。
いつまでもソファーではなんだし、弟たちのベッドへの移動を促しはしたのだが、本人が嫌がったのだ。
理由を聞くと、
「ここにいれば丸井くんの気配を感じられるから」
と答えられる。そうなると呆れながらも仕様がないと諦めるしかない。
どうやらジローの家族がいないという告白が、思いのほか気にかかっているらしい、とブン太は自己分析する。
本人に悲壮感はないようだが、そのギャップがまたブン太を苛立たせるのだ。


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