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□解いてみたら
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遊びに行ってもいい?と聞かれたから承知したというのに、今のこの状況はなんなのだろう、とブン太は思った。
こんなやつでも一応客は客なので、飲み物でもとってこようと席を外した数分間。
その間に熟睡体勢に入ったジローを、呆れた眼差しで見下ろす。
他人のベッドで寝入っているその気持ちよさそうな様子に、手に持ったままのコーヒーカップの中身をぶちまけてやろうかなんて物騒な考えが一瞬頭の中をよぎったが、そんなことをしたら被害はブン太のベッドにまで及んでしまうため、仕方なしにテーブルに置くだけに留まった。
「ったくこいつは……」
呟いて、ふとしたことに気づく。
(なんかこれは…ちょっと、な……)
いつもブン太が使っている枕に顔を埋めているその様に、やめて欲しいというよりもなんとなく気恥ずかしさが先にたった。
かといって取り返すのもなーと悩み、とりあえずベッドの脇に座り込む。
(……にしてもなんかムカつく)
その幸せそうな顔を眺めているとだんだんと腹が立ってくるから不思議だ。
とりあえずこのまま放置しておくのも癪なので、なにか楽しい夢でも見ているのか、綻んでいるジローの頬を軽く抓って引っ張ってみることにする。
それでも、
「……起きやしねー」
微かに身じろぐだけでまったく起きる気配のないジローの鼻を今度は摘んでみる。
しばらくたって息苦しそうに眉間に皺をよせるのを見て手を離す。すると落ち着いたようにすうっと寝息をたてる、というのを繰り返し、ブン太は笑った。
「しょーがねーな」
別に無理やり起こしたとしても煩いだけなので、しばらく寝させておこうと思った時、何気なくジローの首元に目がいった。
学校帰りで制服のままのジローはブレザーにネクタイのまま。
デザインが違うとはいえ、立海も同じブレザーであるブン太は、帰ってくると苦しさにすぐにネクタイを外すタイプなので、そのまま気にせずに眠れるジローが不思議でならない。
(息苦しくねーのか、こいつ?)
いくら緩めてあるとはいっても、自分なら絶対無理だ。
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