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□シュークリーム
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「おーい。シュークリーム食わんか〜?」
「マジ?食う食う!」
「おー、俺腹ペコっすよ〜」
仁王の言葉にいち早く反応を示したのはブン太。次いで赤也の順。
部活が終わった後、着替えの途中だというのにもかかわらず、わらわらと集まってくるメンバーに仁王はお菓子の入った箱をテーブルの上に置いた。
シュークリームの数は8個。ちょうどレギュラー陣の数と一緒だ。
すぐにでも食いつきそうなブン太を抑えつつ、ぐるりと辺りを見回した仁王は微かな笑みを浮かべた。
「お、これ抹茶ッスか?いっただきー!」
薄めの皮から透けて見える色が他の数個とは違うのを目ざとく見つけた赤也が手を伸ばし、がっと掴む。
「あっ!赤也ずりーぞ!」
「早いもの勝ちっすよ」
へへへっと笑って口に放りこむ。
「言い忘れちょったが、ハズレが紛れこんどる。当たったら買い出し係じゃ」
まるでタイミングを見計らったかのようにそう伝えた仁王の台詞と、赤也が口を押さえて蒼白になったのはほぼ同時だった。
涙目になり部室から飛び出していったのは口の中のものを吐き出すためか、飲み込むために必要な水を求めての行動か。
残された人々は、互いに顔を見合わせて無言になった。
一人満足そうな仁王と、それを咎めるように「何をしたんですか、仁王くん?」と問いかける柳生はみんなの気持ちを代弁している。
「ワサビ入りシュークリーム。基本じゃね」
「……まったく。あなたという人は悪戯が過ぎます」
「じゃが、普通にジャンケンじゃつまらんと思わんか?」
思いません、と反論する柳生だったが、対する仁王はどこ吹く風という感じで、何を言っても無駄だった。それがわかっているため溜め息一つで諦めてしまう。
「いいじゃん。赤也に決定したんだろ?ラッキーだし、他のは安心して食えんだし」
ワサビの色だったらしい抹茶色は他にはない。
嬉々として残りのシュークリームにブン太がかぶりつく。
早まって赤也のを取り返さなくて良かった。
そう考えながら咀嚼した瞬間。
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