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□プレゼント
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校門を出たところで、ブン太は微かに自分の名前を呼ぶ声を聞いた。
遠くのほうにぶんぶんと大げさなくらいに手を振りながらこちらに駆けてくる姿が見える。
「まっるいくーん!」
数秒後には目の前に現れるくらい勢いよく突進してきたその人物を、ブン太は直前で身をかわして避けた。
大声で名前を呼ばれるのも恥ずかしいが、人前で抱きつかれるのも勘弁したい。
なんとか転ぶ直前で勢いを殺し、直立の姿勢でブン太を見上げ、にこりと微笑む。そんな相手にブン太は「やっぱり来たか……」と呟いた。
いつも何の理由もなくやってくるジローが、今日という日を逃すわけがない。
「もっちろん!なんたって丸井くんの誕生日だもんね」
「そうかよ」
まったく誰から聞いたのか。いつの間にかブン太の誕生日や諸々の個人情報は漏れているらしい。まあ情報源はなんとなく想像がつくけれど。
歩き出したブン太を追いかけつつ、ジローはちらっとその視線を下へ向けた。
その先はブン太の手元で、いつも持っているカバンの他に、今日は大きな紙袋が二つほど揺れてがさがさと音を立てている。
重そうに見えるけれど中身はほとんどが菓子類なのでたいした重量ではない。その全部が誕生日プレゼントとして集まったものだった。
何か言いたげなジローに気づかないふりで、「食う?」とその中の一つを差し出してみる。
「いらない。だってそれ、丸井くんが貰ったものでしょ」
そう言って頭を振る。いつもなら食いついてくるはずなのだが、遠慮ではなく違った意味で断るジローの顔にはちょっとした嫉妬の表情が張り付いていた。
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