Main

□きみの名前
1ページ/3ページ

空腹のあまり買い出しにでかけたコンビニ帰り。
ほかほかの肉まんを頬張りながらジローの家までたどり着くと、玄関前で座りながらこちらをじっとみている珍客に出会った。
「おい、ジロー?あれ、なんだ?」
「ん―、何?」
ポケットをまさぐって家の鍵を探していたジローは、ブン太にそう聞かれてようやく顔を上げた。そして、「あ」という顔をする。
ジローが存在に気がついたことが分かったのか、それはパタパタと尻尾を振って一声「わん」と鳴いた。

「時々家に来るんだ。エサやってるうちに懐いちゃって」
とはいっても野良犬ではないらしい。
犬種などはあまり詳しくないのでわからないけれど、ちゃんと小綺麗に毛並みも整えられているし、首輪もしている。きっと飼い主が気づかない間に、少しだけ抜け出しているのだろう。
「ちょっと待ってねー。なんかあったかな?」
どうやらジローは散歩の間にお腹が減った際のおやつ補給場と認識されているようだ。
今買ってきたばかりのコンビニの袋をごそごそと漁って、犬が食べられそうなものを物色するジローに、ブン太は「ふーん」と呟いてその場にしゃがみ込んだ。
その瞬間、犬の目がキランと光った。
ブン太が口に含んだままの肉まんをめがけて飛びかかってくる。
「うわ……っ!」
それでなくても不安定な体勢だったため、驚いて後ろへのけぞったまま倒れ込んでしまうブン太の胸の上に乗っかって、ふんふんと鼻を鳴らされる。
一応そのまま食いついてくるわけではないが、くれるまで退きませんよ的な頂戴攻撃をされて、ブン太は叫んだ。
「ジロっ!助けろ!」
上に乗られるのは弟たちで慣れているとはいえ、やはり勝手が違う。
大型犬というのでもなさそうだが、それでも十数キロはあるだろう重さは、邪険に振り払っていいものかどうか判断がつかない。
「うわーっ!何やってんのー!?離れなさい!ブン太!」
「…あ〜?お前何言って……!」
離れるのは犬だろぃ!?
名前を呼ばれて抗議の声を上げたブン太だったが、身体にかかっていた圧力が消えたことに気がついて、軽くなった上半身を起こした。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ