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□11月11日
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「腹へった〜……」
ハードな練習を終え、部室を出た宍戸がそう呟いた。
「同感……」
うんうんと頷きながら少し後ろを歩くジローだったが、
「ジローは寝てただけだろうが」
と呆れられて、寝ぼけた目を擦った。
「そんなことないよ〜。脳内シミュレーション」
「……動いてねーのに腹は減るのかよ」
「減るね」
寝るのだって結構体力を使うのだ。
「糖分欲しいな。宍戸なんか持ってないの?」
「ねーよ」
あったらとっくに腹の中に納まっているとぼやかれた。
いつもならこういう時には鳳がさりげなく気をつかって、差し入れ用に食べ物を用意してくれているのだが、今日は家の用事とやらで休みだった。
グーグーと鳴るお腹を押さえつつ、こうなったら早く帰ろうと帰路へつく。
校門まであと数メートルというところまで来ると、「あれ?」と宍戸が声を上げた。
「な、ジロー。あいつ、おまえの『丸井くん』じゃねーの?」
「え!?」
空腹のあまり俯き加減になっていたジローだったが、その台詞に上げた顔を輝かせた。
門を背に蹲るように座っていた人物を目にとめる。
目立つ赤い髪。口にはフーセンガム。
他校の前ということもあるせいか、少し居心地が悪そうなその姿にジローは空腹も眠気もすっとばして駆け出していた。
「丸井く〜ん!」
名前を呼びながら、一目散にこちらを目指して突撃してくるジローを見て、ブン太が立ち上がる。
「よう、ジロー」
「丸井くん!どうしたの!?」
「いや、ちょっと通りかかったから寄っただけ」
どうすればこんなところをちょっと通りかかれるのか分からないが、予期せずにブン太に会えた喜びでいっぱいのジローは、そんなことは頓着せずにキラキラした瞳でブン太を見上げた。
「ほい、これやる」
「え?何?」
頭に上にポンとのせられた箱を手にとる。
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