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□プレゼント
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「あっそ」
あっさりと元にしまうと、今度はカバンからガムを出して自分の口に放り込む。
続けてもう一つ包み紙を開き、隣りを歩くジローの口へそれを突っ込んだ。
「これは朝、自分で買ったものだからな」
驚きに目を丸くしているジローに、大きくガムを膨らませながら、にっと笑う。
ジローが何を気にしているのか。それをわかられていることに気づいたらしいジローが顔を微かに赤くした。
「で、何?」
「え?な、何って……何?」
「何か言いたいことがあるんなら言えよ」
慌てた様子で彷徨わせた目線が、再び紙袋に向いた。
困ったように「あー……」と呟く。
「いろいろプレゼント考えてたんだけど。食べ物関係が一番喜ぶとは思ったんだけど他からいっぱい貰うんだろうな、とか、じゃあ違うものだったら何がいいのかな……とか」
たしかに食べ物に関しては、しばらく困らないほど貰ったこの袋の中身が、ジローの予想が当たったことを物語っている。
「思いつかなくてさ。他の誰かと同じ物なんてヤだし」
やっぱり特別なものあげたいじゃん?
とつとつと話し出すジローの声に、ブン太は(そんなことか)と嘆息する。
自分でも忘れがちな誕生日を、わざわざ祝いに来たという事実だけで嬉しく思わないわけがないというのに。
でね、とジローは続けた。
「やっぱりこれしかない!と思ったんだ。貰ってくれる?」
「なんだよ?」
ジローの持ち物はいつもと変わらない、学校帰りのカバンのみ。
特別なプレゼントなんて持っている様子もないため、てっきり何も用意出来なかったと言うとばかり思っていたのだが。
真剣な目にたじろいで歩みを止めたブン太に、ジローは身を乗り出す。
「俺」
「は?」
「だから、俺。まるごと俺を丸井くんの物に……」
「バカか」
最後まで言わせず、その台詞を遮ったブン太はこめかみをひくつかせる。
ふざけているならいざ知らず、笑ってはいるがジローは本気だ。それが妙に腹立たしい。
そもそも。
そう、そもそも、だ!
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