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□とりあえず違えようのない事実
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「うん……ううん……うーん?」
なんだかわからない返事をして、じーっと幸村を見つめる。
「ジロー、おまえそれ返事になってねーぞ」
呆れたようにブン太が側にしゃがみ込んできた。
そんなブン太と幸村に、交互に目線を移し替えたジローが、はあ〜っ、とため息を吐く。
(やっぱり今日だって一緒にいるC。仲がいいって言ってもやっぱり…やっぱり……)
「幸村くん……ずりー……」
ぼそっと呟いた。
毎日学校で会えて、毎日ブン太の声を聞けて、毎日笑いかけてもらえて、毎日一緒にテニスができて。
一日幸村に成り代われる権利というものを譲ってもらえないだろうか。
そんなことを考えて上目遣いで物言いたげな表情をするジローを、扱いに困ったのか幸村が首を傾げて苦笑した。
「ええと、芥川くん、頭、大丈夫?」
「……へ?」
なんだろう。
頭が悪いと言いたいのか。それとも頭がおかしいと言いたいのか?
たしかにそうかもしれない。否定はしきれないけど。
少し離れた場所に移動して我関せずといった姿勢でも、その実聞き耳はしっかり立てていた岳人がくっと笑った。
微妙な気持ちが顔にでてしまったのか、幸村が慌てて「違う違う」と否定する。
「昨日の体育の時間、半分寝ていてボールがぶつかったって聞いたけど」
「ああ……うん」
体育は得意だが、まれに起こる事故だ。
半覚醒の頭では、前方には注意がいっても、後方までは意識が届かないらしい。
純粋に怪我の心配をしてくれていたらしい幸村に安心した。
「全然平気。よくあることだC〜」
「そう。でも気をつけないとね」
「うん。そうする」
一応素直に頷いたジローだったが、そこまできて、あれ?と首を捻った。
なぜそんなことを知っているのだろう。
昨日のことなんてジローのクラスの人間くらいしか知らないはず。
「幸村くん、なんで知ってるの?」
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