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□とりあえず違えようのない事実
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「だけどさー……ツラいものはツラいわけ。……聞いてる?がっくん」
午前中の試合が終わって、お昼ご飯を食べながら愚痴をこぼすジローを適当にあしらっていた岳人だったが、そう聞かれて「あ〜…?」と生返事で答えを返した。
「聞いてるけどよ……」
正直どうでもいい。
幾度も聞かされた泣き言は耳にタコができるほどだ。
「ジロー、そんなに握りしめてると牛乳溢れるぞ」
ストローをさしたパックの牛乳は、ジローが無意識に力を入れていたせいで変形しかけている。
「イライラするからカルシウム摂ってんのか?」
そのわりに全然効いてない気がすると思うが、ジローがストローの先をガシガシと噛みながら首を振った。
「違う。これはさ〜………幸村くんって背高いじゃん?」
少しは追いつけるかな〜とか?
(丸井くんの好きなものに近づけるかな、なんて。こんなのバレたらかなり重いんじゃねー?)
ブン太に知られたらきっと顔をしかめられるのがわかっているため、心の中で呟いたジローだったが、さんざん悩み相談にのせられていた岳人には容易に想像できたようで、ふーん、と納得していない感じのまま頷かれた。
「ま、いいけどな。健気ってことにしといてやるよ」
「……何それ」
岳人の本当に言いたいことはなんとなく雰囲気でわかった。
ジローだって、このままの自分を好きになってもらえればそれで苦労はしないのだ。
どうにかしてジローが幸村とそっくりになったって、それはブン太が好きになった幸村とは違う。
それはわかっているけど!
「淡い期待は捨てられないってねぇ……」
所詮は他人事。笑いながらジローを見やる岳人に、ジローは「ほっといて」と牛乳を飲み干した。
「っと。噂をすればってやつじゃねー?」
「へ?」
岳人がアゴで示した方に目をやると、確かにそこにはブン太の姿があった。
そして、こちらに向かって歩いてくるその隣には、
「やあ、芥川くん。元気かい?」
にっこりと笑って話しかけてくる立海の部長を、ジローは地面に座ったまま見上げた。
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