Vampire

□14(完)
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うっすらと残るこの切り傷はいつついたものだったろう?
記憶を辿るが、思い出せなくて、もう一度首筋に手を当てる。
この間から妙に痒いのだ。これもそのイラつきの原因の一つかもしれないと、鏡で見てみると虫に刺されたような痕が二つ並んでいるのを発見した。
蚊にしては妙な腫れ具合ではあったが、
(血くらいいくらでもくれてやるよ)
なぜかそう思った自分に驚く。
何をするでもなく、寝転がっていたソファーから立ち上がると、ブン太はまだ陽射しの強い外へと足を向けた。
忘れているのだろうか。何か大事なことを。
この間からずっと感じているこれは、虚無感。いや喪失感ともいうべきものなのだろうか。
花壇の脇にしゃがみこんで、綺麗に咲いているその花を見つめながら考えた。
なぜ幸村はブン太の家に通うようになったのか。
なぜこの薔薇だけが枯れたままなのか。
息苦しさを感じて、ブン太は塀に寄りかかって座り込んだ。
(何を待ってんだ? 俺は)
どのくらいそうしていたのか、ため息を吐いてそろそろ家の中へ戻ろうと腰を上げようとした、その時。
近所でも凶暴さで有名な犬が、ワンワンと吠えるのが聞こえた。時折鎖を外してはそこら辺を徘徊しているので、危ないと苦情も出ているのだけれど、誰も対処しようとはしていない。
「う……わ!!」
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