宴の文庫
□第2章〜5〜
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「まさか、シリウスが動いていたとわな…」
暗闇が全てを支配している領域…どこにあるか分からない異界の中に存在する闇の都にジンはいた。
妖人共が蠢く中でただ一人、足を進める。
先に見えてきたのは巨大な城…その中でさえ闇に侵食されていた。
城内に入ったジンは広い廊下を歩きながら、ある名を呼び、叫ぶ。
「おい!クウ、クウはいるか!?」
ジンの声が城内に反響して数分
「なに!?さっきからうるさいわ!!」
フと音もなく目の前に現れたのは、一人の青年。
碧の瞳と、黒髪を持つ…クウと呼ばれた青年。
「人がせっかく休んでんのに、何の用だよ!」
ムスッとした表情をし、頬を膨らませたクウ。
「そう、言うな…シリウスが動いているとカイ達に伝えてくれ。」
ジンの言葉にクウは目を見開く。
「マジで。」
「あぁ」
驚きの表情は、ゆっくりとニヒルな笑みに変わっていく。
「楽しくなりそぉじゃん!」
新しい玩具でも見つけたようにクウは言葉を発した。
その言葉を残しクウの姿が消える。
ジンは、クウのいた場所をしばらく眺め俯く。
傷をギリギリと圧迫しながら、滴り、指の間から伝い落ちる紅を…波紋を描く血だまりを見下げる。
血だまりがジンの歪んだ表情を映し出す。
「クク…シリウスか…カイが動き出すぞ。」
血だまりに映ったジンの顔が揺らぎ、かわりに映し出されたのは…
「お前を殺し、全てを手にするために…なぁ、シリウスよぉ!」
金糸の髪を風に靡かせ地に佇むシリウスの姿
光と闇がぶつかる…