宴の文庫

□第2章〜3〜
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錆びた音を立てる扉を開けた…
その中はまるで闇のような空間が続いており何がいるのかもわからない。
シリウスは腰に携えてある刀に手を伸ばし、あたりを警戒した。
シュウとユリアもそれぞれの武器を構え、体制を整える…と

「ようこそ!神子シリウス…そして招かれざる客と役立たずのユリア。」

声と同時に邸内の明りが灯され、シリウス達の目の前に巨大な広間と階段を映し出した。
そして、その階段の上には声の主であろう人型の妖人が不敵な笑みを浮かべ佇んでいた。

「セイレーン…さ、ま。」

シュウの隣で武器を構えていたはずのユリアが怯えを露にして、そう言葉を発した。
シリウス達を見下ろす妖人…セイレーン
人の肌を持っているものの、その背には碧の翼、手には紅く鋭い爪…妖人独特の血の色をした瞳。

「おとなしく殺して入れば、街を失わなくて済んだのに…残念ね。」

その言葉にユリアはビクリと震えた。
ユリアの様子を尻目に、シリウスはセイレーンを見据え、静かに言葉を紡いだ。

「…お前、カイの下の者だろ。」

シリウスの発言にセイレーンの表情が変わる。

「私の名は、特定の者しか知らんのでな。」

状況の読む事ができないシュウとユリアの二人はシリウスの背を不安そうな面持ちで見つめる。

「フフ…えぇ、そう私はカイ様に仕えるモノ、カイ様にアンタを殺すよう言われたの!!」

セイレーンは不敵に笑い、3人を見下すように視線を向ける。
それを鋭く睨み返すシリウス
刀の柄に手を伸ばしスラリと抜き構えをとった。
シュウ達もそれに合わせ体制を整える。

「たった3人で、何ができるのかしら!!」

セイレーンが声を上げると、数十…数千体の妖人がシリウス達を囲む。

「アハハハハハハハ!いくら神に創られたアンタでもこれだけの妖人を相手にするなんて無理よねぇ!」

じりじりと迫る妖人

「あのヤロー…」

シュウは上で高笑いするセイレーンを睨みつける。

「神子についたのが運のつきだ!恨むなら神子を恨みな!」

セイレーンの言葉が邸内に響き渡る
追い詰められ、これで終わりなのかとシュウは唇を噛み締めた…が

「フ…クク…」

笑い声?…振り向くとシリウスがクスクスと笑っていた。
その事に気付いたセイレーンが声を荒げる。

「何がおかしい!お前は追い詰められてるんだぞ!!」

セイレーンの怒号にシリウスは

「追い詰められた?誰が?どこが?」

シリウスの表情は余裕に満ちている。
…そう、笑っている。

「なめられたモノだな、…私も…」

シリウスの笑みに焦りを感じ、セイレーンは一気に妖人共を襲いかからせた。
妖人たちがシリウス達に向かって津波のように襲い掛かる。


「死にな!!神子・シリウス!!」
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