宴の文庫
□第1章〜3〜
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妖人によって殺された数人の聖騎士達の骸の供養が二日にわたって行われた。
『神子』として式に出席させられたシリウスは疲れた身体を休ませるため、無人である城内の噴水広間へ足を向けた。
「・・・。」
池の縁に腰を掛け波打つ水面をただ眺める。
ザァァァアー・・・
流れ落ちる水音が広い空間を支配しようとしたときだった
「シリウス?」
その声に反応し、シリウスは声のした方へ瞳を向ける。
そこにいたのは・・・
「やっぱりそうだ。」
そういってヘラリと笑ったのはシュウ。
「何か用か?」
近づいてきたシュウにそっけなく問いを返す。
縁に腰をかけているシリウスはシュウに目線が合うよう見上げる。
「いや・・・礼が言いたくてさ・・・ありがと・・・な」
シュウがぎこちなく言葉を発すると、シリウスは何も言わずただ無言で聞き入れる。
「アンタの・・・シリウスのお陰で、何かふっ切れたんだ。理由は・・・わかんねぇけど アイツを倒す時、アンタの言葉を聞いた瞬間・・・ずっと蟠ってたものが消えたんだ。」
その言葉にシリウスは
「それは・・・お前の心にそれを断ち切りたいと思う気持ちがあったからだろ、私はただの『キッカケ』を生んだに過ぎない。」
シリウスは妖艶な笑みを浮かべながらシュウに返答した。
シリウスは立ち上がり、シュウの横を通りすぎる・・・と
「なぁ!シリウス・・・俺をアンタの旅に同行させてくれねぇか?」
ピタリと歩みを止めたシリウス、シュウからの視線を背に感じながらも後ろを振り向こうとせずに、すこし間を開けて言葉を紡ぐ。
「お前は『死』を恐れるか?」
シリウスの言葉に周りの空気がピンと張り詰める。
重く冷え冷えとする空間の中でシュウは凍りつく様な空気を・・・静寂を破るために言葉を発した。
「俺は・・・恐いよ・・・、剣を手にしてる以上、覚悟しなくちゃいけないことだけど・・・死ぬことほど恐いものは無いよ。死は何もかもが消えて無になる・・・無になるってことは何もできなくなる。」
シュウの紡ぎだす言葉の一つ、また一つと空気を震わす。
「だから・・・死ぬのは恐いよ。それに消えてなくなるなんざ御免だ。」
その言葉にシリウスはシュウに背を向けたまま・・・
「フ・・・クク・・・お前は面白いな・・・他の人間のように自分を偽らず、バカ正直に生きてる。 だからかもな・・・。」
何のことかわからず頭の上に?を浮かべる。
シリウスはシュウの方を向き・・・
「ついてくるのは構わん、ただ・・・自分の身は自分でどうにかしろよ。」
微笑みながら、そうシュウに向かって言うと
シュウはシリウスに飛びつきそうな勢いで走り出す。
「サンキュー!これからヨロシクな、シリウス!」
第一章〜終〜